代表幹事コメント

『経済財政運営と改革の基本方針2021』の閣議決定について

2021.06.18update

一般社団法人 関西経済同友会
代表幹事 古市 健

  • 本日、『経済財政運営と改革の基本方針2021(骨太の方針)』が閣議決定された。
  • コロナ禍により、我が国の感染症への対応力の弱さが露呈した。今回の「骨太の方針」では、国や自治体が病床や医療人材の確保への協力を迅速に要請・指示できる仕組みや、ワクチン・治療薬の早期実用化を可能とする仕組み等の構築に向け、法的措置を検討するとしている。これらはコロナ発生当初から指摘されてきた課題であり、再度の感染拡大の可能性も踏まえると、最優先で取り組むべきことである。
  • コロナを契機に注目を集めたもう1つの大きな課題は、国と地方の役割分担のあり方である。昨年度、当会の「地方分権委員会」が実施したアンケート では、多くの地方自治体から、地域の実情に応じた施策を迅速に決定・実行できるような権限・財源のあり方への問題意識が示された。地方自治体が有事の際に住民目線での適切で迅速な対応をとれるよう、今のうちから役割分担の再構築の検討が進むことを望む。
  • また、次の時代の成長実現に向け、「グリーン」、「デジタル化」、「地方創生」、「子ども・子育て」の4つが「原動力」として位置づけられ、それらを支える様々な基盤づくりを進めることが示された。いずれも正鵠を射ている。
  • とりわけ、「子ども・子育て」が柱の1つに掲げられたことを評価したい。新たな組織(子ども庁)創設が打ち出されたが、単なる行政組織の追加に留まることなく、縦割り行政の弊害を打破する中核を担うべきである。そして、次世代を担う子どもや子育て世代にとって必要な支援とは何か、あるべき姿は何かを追求して欲しい。また、政策の決定過程に女性の参画拡大や若者の意見を反映する方針だが、これは是非実行し、次世代が真に希望を持てる国・社会づくりに資する政策が打ち出されることを期待する。
  • 「デジタル化」の加速は、言うまでもなく官民両者にとって重要な課題である。政府は、一刻も早くデジタル・ガバメントを確立すべきである。住民視点に立ったサービスが効率的に提供される体制を構築すべく、妨げとなっている規制の見直し、マイナンバー制度の一層の普及・定着に取り組んで欲しい。また、最先端技術や民間企業の力も活用し、行政サービスの質的向上とコスト削減の両立を実現し、新しい産業の創出、新たな経済成長へと繋がる流れを起こして頂きたい。
  • 昨年度の「骨太の方針」では抜け落ちていた「財政健全化」に関して、プライマリーバランス黒字化を再度掲げたことは評価したい。今年度内に達成年度を再確認するとのことだが、安易に後ろ倒しすることなく、次世代にツケを残さないよう強い危機感を持って財政規律を保つことを求めたい。コロナ感染症対策に伴う政府の債務増加は当面止む得ないが、コロナ終息後においては「コロナ特別会計」による債務の見える化と「独立財政機関」による管理・監視等を通じて、着実な債務削減を進めることを求める。
  • 「4つの原動力」や「財政健全化」はいずれも重要な政策課題であり、その成否は我が国の未来を大きく左右する。デジタル化への対応をはじめ、国際的にみて、我が国が大きく遅れている分野があることが、コロナ禍を通じて明白となった。政府には、看板として政策課題を掲げるだけでなく、具体的な実行計画に落とし込み、この機を逃せば我が国の未来はないとの不退転の覚悟をもって、確実にやり切って欲しい。

以上

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