AI・ロボット社会到来による真のグローバル競争時代に備えて
~希望ある雇用の未来を勝ち取るために~
関西経済同友会 雇用の未来委員会(委員長=池田博之 りそな銀行 取締役副会長)は、提言「AI・ロボット社会到来による真のグローバル競争時代に備えて~希望ある雇用の未来を勝ち取るために~」をまとめました。AI・ロボットなどを巡っては、加速度的な技術の進歩によって日本における労働力不足を解決し、生産性を劇的に向上させる手段として大きな期待が寄せられています。しかし一方で、AI・ロボットによって将来的には雇用が代替されるのではないかという不安も広まっています。そこで、企業が生産性向上と雇用創出を両立し、日本における雇用の未来を切り拓いていくためには何をすべきかについて調査・研究を行い、提言にまとめました。提言の要旨は以下の通りです。
現在、AI等の技術の進歩と実用化に向けた動きが急速に進展している中、「シンギュラリティ」の到来など様々な情報が混在し、AI・ロボットが雇用を奪う脅威として捉えられている場合も多い。しかしながら、現時点における技術的観点からすれば、AI・ロボットが自ら意思を獲得することは起こらず、人間による目的設定が不可欠である。AI・ロボットは、人間による目的設定をもとに、特定の分野において人間を超える能力を発揮するものであり、あらゆる産業においてBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の有効なツールになると捉えるべきである。また、これらの技術が引き起こす本当のインパクトは、①「企業規模・産業を超えたビジネスの進化」が起きて、誰でも少人数で世界を相手にビジネスが可能な時代が来ること、②「真のグローバル競争時代の到来」により国内市場を守ってきた国境や言葉、規制などの壁が、いとも簡単に崩壊してしまうこと、である。その結果としてAI・ロボットそのものに雇用を奪われるのではなく、AI・ロボットにより生産性を高めた企業との競争に負けることにより、雇用が喪失するという事態が懸念される。
【提 言】「AI・ロボット社会到来による真のグローバル競争時代に備えて~希望ある雇用の未来を勝ち取るために~
AI・ロボット活用による生産性向上と新たな付加価値創出により、真のグローバル競争を勝ち抜き、希望ある雇用の未来(=「ポジティブな未来」)を勝ち取るためには、今から将来を見据えた取り組みを開始することが極めて重要となる。そして、経営者、労働者、国、教育分野のそれぞれが、下記の取り組みを通じて、仕事の質の向上と量の拡大を実現できるように一丸となって取り組む必要がある。
[経営者]: 組織内での健全な危機意識の共有、自らが先頭に立ち人事制度や組織等の抜本的な改革を行うこと
[労働者]: キャリアの自律に繋がる新しい働き方を積極的に行い、働き方改革を自らが実現するとこと
[ 国 ]: 法規制や規制緩和などの先行実施、国際動向の体系的な収集・発信を行うとともに、ノーレガシー政策の徹底やセーフティネットを構築すること
[教 育]: キャリア形成を支援する職業教育の充実や創造性・コミュニケーション能力育成を中心とした教育制度、さらにこれらの実現に向けた公的支出の拡大を行うこと
AI・ロボット技術による環境の変化を脅威ではなく、チャンスとして前向きに捉えることが不可欠である。雇用を生み出すプレイヤーは企業であり、経営者は、社会全体に対して未来の経営ビジョンをしっかりと示し、実行するための強いリーダーシップを発揮することが求められる。そしてこれらの取り組みを通じて、「ポジティブな未来」を勝ち取らねばならない。
以上
一般社団法人関西経済同友会
雇用の未来委員会