21 世紀の多様化社会を迎えて、農業の意義を見直そう
我が国の農業は存続の危機に直面している。
就農者の高齢化が急速に進展する一方、新たな就農者は慢性的に不足し、耕作放棄地は増加の一途をたどっている。
意欲的な就農者は、長時間労働、気候変動といった厳しい条件下で懸命の努力を行っているが、我が国の食生活が急速に欧米化し、畜産物や油脂類の消費が拡大するなか、その生産に必要な飼料穀物や油糧種子の多くを海外に依存したことから、食料自給率(カロリーベース)は40%と主要先進国中最低レベルにまで落ち込んでしまった。
しかし、これまでの農業政策は、コメの生産調整や意欲の有無にかかわらず支払われる価格補填など、農業の競争力強化につながらない施策に多くの資金が費やされていた面があり、現状のまま、東アジア自由経済圏や経済連携協定(EPA)、貿易自由協定(FTA)の実現に伴って安価な海外農産品がさらに流入すると、壊滅的な事態を招く恐れもある。
また、依然として世界の人口は増加し続けており、中長期的に世界の食料需給が逼迫する可能性を考えれば、我が国のみが海外からの食料輸入を確保しつづけられる保証はないばかりか、他国の食料安全保障を脅かさないという意味でも、我が国として自立的に食料を確保できる体制を確立することは国際的な責務でもある。
さらに、耕作放棄地の増加は、自然災害防止や環境改善の阻害要因となり、国土の保全コストを押し上げ、経済的にも国民生活を脅かしかねない。
このような状況下、農業を国民生活の必要欠くべからざる基盤と位置付け、その意義を再定義していくことは国民全体の課題である。
政府においては、3月25日に閣議決定された、今後10年の農政のあり方を示す新たな「食料・農業・農村基本計画」に基づき、農業の構造改革を推進していくとしているが、我が国農業の重要性を考えるとき、その再生を政府にのみ任せるのではなく、経済界も積極的に議論を喚起し、政策形成・展開に関与していくことが必要である。
関西経済同友会農業政策委員会は、このような認識のもとに、①企業経営者としての視点、②都市生活者としての視点、③関西活性化の視点から検討を行い、農業の産業的自立、食の安全、安心の確保、新たなライフ・スタイルの構築などについて、以下の提言をとりまとめたところである。
平成17年4月
社団法人関西経済同友会
農業政策委員会