提言・アピール等

第69回西日本経済同友会大会 共同見解

2011.10.21update

平成23年10月21日
西日本経済同友会

  • 現状認識
    天然資源の乏しい日本が、明治以来の近代化と第二次大戦後の経済復興を成し遂げた原動力として科学技術は大きな役割を果たしてきた。しかしながら、東日本大震災、また9月に紀伊半島を襲った台風のような、計り知れない自然の破壊力の前では、高度に発展したわが国の科学技術を十分に活用することができなかった。震災前からわが国が抱える多くの深刻な政治・経済・社会問題に加えて、この未曾有の災害により国全体の活動が大きな影響を受け、取り組まなければならない課題が一層山積みになった。今こそ、我々経済人が英知をしぼり、今後の日本のあるべき姿を明確にし、今何をなすべきか発信するべき時である。
  • 減災と産業振興に貢献する科学技術
    東日本大震災後、一極集中から多極分散かつ地域主導型への転換は不可欠となった。そのような「新しい日本の形」を考える上で、科学技術が、地域をまもる「減災」と地域を発展させる「産業振興」に果たすべき役割は、これまで以上に重要となった。大規模な自然災害に対しては、平時から備える体制を如何に構築するかが課題であるが、従来型のインフラ(ハード)だけで対応するには限界がある。蓄電池を利用した電力需給管理や、避難情報等を早期伝達する情報網整備などの新しい発想を持ったソフトも併せて大切である。これらの組み合わせで減災力を向上させ、耐性が強くかつ回復力のある(レジリエントな)新たな社会を作るために、科学技術の貢献が求められている。阪神淡路大震災を経験し、今後、東海・東南海・南海地震の発生が懸念される西日本地域全体が一丸となり、減災技術の集積地域を目指すべきである。一方で、従来から科学技術は地域産業の活性化、地域発展に大きく寄与してきた。和歌山県を例にとると、国の「地域イノベーションクラスタープログラム」において、農林水産業等に最先端の科学技術を活用している。今後の地域の産業振興にとって、第一次産業に限らず第二次・第三次産業を科学技術によって高付加価値化することは、一つの目指すべき方向であろう。資本、人材、技術などから必要な要素を組み合わせ、地域に根差した得意分野を生み出す施策を実行していくべきである。
  • 地域発新たな国づくり
    わが国全体の効果的でスピード感のある科学技術振興のためには、地域の産学官が、国に任せるだけではなく、自立的に活動することが不可欠である。その結果、地域の科学技術が深化し、地域色豊かなアイディアが生み出されることで、国力の基盤となる地域経済が発展する。一方で国は、地域発展のために、産学官連携のプラットフォームの構築への支援、最先端分野の研究開発拠点の明示、地域のニーズに応じた投資や予算措置を柔軟に行える制度の整備などに、より一層力を注ぐべきである。昨今の若者の理科離れや学力低下など、人材面から見ると科学技術の将来は危機的な状況にある。この状況を打開するためには産学官の垣根を越えて活発な人材交流を行うことで、組織の内向き志向や閉塞感を打破し、科学技術を魅力的で実効のある分野とする試みに取り組むことが急務である。「地域発新たな国づくり」、すなわち、西日本がレジリエントな社会を構築するための減災と産業振興に貢献する科学技術の先進地域になり、日本経済を再び力強い成長の軌道に乗せようではないか。

以上