東日本大震災からの復興の基本方針に対する緊急提言
2011.08.05update
東日本大震災から約5か月が経過し、政局の混迷の中、ようやく政府の復興基本方針が策定された。同方針では、関西経済界が主張してきた復興庁の設置、復興特区の創設などが盛り込まれたことは評価できる。今後は本基本方針の下、安心で安全なまちづくり、産業振興と雇用拡大のための経済活性化など、本格復興に向けた取り組みをスピード感を持って速やかに実行していくことにより、被災者や被災地域の復興への希望と意欲を支えていく必要がある。
関西経済界として、政府・与野党に対し、今回の基本方針を踏まえ、下記事項について強く要望する。
記
- 司令塔としての復興庁の早期設置
阪神・淡路大震災の際には、復旧・復興事業を推進するにあたり、複数の府省の管轄にまたがる施策を束ねてワンストップで対応する司令塔機能が不十分であった。基本方針で示されている復興庁については、現段階では真に司令塔になりうるかは不明確である。
政府においては、復興庁設置法案を早期に提出するとともに、設置法案では、複数の府省にまたがる権限と予算を集中させ、復興施策の企画立案と事業実施を一元的に担うことを明確にすべきである。また、被災地の状況把握と自治体との連携を密にするためにも、本拠地を東北に置くべきである。 - 被災自治体の行政機能の回復・補完
被災地における地域ごとの復旧事業の推進、復興計画の策定と実施の主体的な担い手は、住民に身近な基礎自治体(市町村)である。ところが、今回の大震災では、主たる担い手である基礎自治体の多くが甚大な被害を受け、対応に当たる職員の不足により行政機能を著しく低下させている。スピード感のある復旧・復興事業を遂行するためには、被災自治体の行政機能を早急に回復・補完することが不可欠である。「カウンターパート方式」により被災地支援に取り組んでいる関西広域連合をはじめ、多くの自治体が被災地への人材派遣を行っているところであるが、国においては、退職者も含む自治体職員をはじめ、幅広く官民の人材派遣の推進に必要な支援(派遣費用の財政負担など)を行ってもらいたい。 - 現予算の早期執行と第3次補正予算の早期編成、および復興財源の確保
今回の大震災対応として、これまで2次にわたり計6兆円規模の補正予算が編成されたところであるが、阪神・淡路大震災を上回る被災規模からは、17兆円程度の追加予算措置が必要とみられる。
そこで、第1次・第2次補正予算で手当てされた復旧事業の迅速な取り組みとともに、被災自治体が安心して本格的な復興事業の具体化を進められるよう、政府と与野党は一致協力して、速やかに大型の第3次補正予算を早期に編成すべきである。
第3次補正予算の編成に当たっては、地方自治体に対する使途の自由度が高い交付金の創設、関西経済界が提案した民間資金とあわせた復興基金の設置により、被災地域のニーズに柔軟かつ機動的に予算執行ができるようにすべきである。
同時に、財政健全化の道筋の下での復興であり、歳出削減の徹底や民間資金の活用なども含め、不要な赤字国債発行を抑えた説得力のある計画を提示することは急務である。復興財源確保のための税制措置については、本年6月に発表した「東日本大震災からの復興に向けた第2次提言~復興計画の早期策定と復興財源のあり方~」で示した通りである。すなわち、国民全体で広く負担を分かち合うという共助の精神のもと、復興支援税(仮称)を創設すべきである。その場合、時限措置として消費税に一定期間上乗せすることが適当である。ただし、被災地域の住民の負担軽減措置を講じるべきである。 - 電力供給の安定化の早期実現
東北地方の復旧・復興に当たっては日本全体で支えることが最も重要である。とりわけ、関西は、震災以降、日本経済を下支えるという大きな役割を果たしてきた。しかし、成長に向けて経済活動を活性化すべき大事な時期に生じた現在の電力供給不足は、これからの復興への取り組みに大きな足かせとなっている。
原子力発電所は安全性確保が最優先であるが、定期検査を経た原発の再稼働をこのまま先送りされた場合、深刻な電力不足に直面することになりかねない。
電力は社会・産業を支える基本インフラであり、供給不安は国民生活や経済活動に大きな影響を直ちに及ぼす。電力供給の安定化は、産業の空洞化を防止するための最重要課題のひとつと言っても過言ではない。
政府においては、定期検査後の原発について、責任を持って地元自治体の理解と合意を得て再稼働を速やかに実現し、電力供給の安定化を図る必要がある。
以上
2011 年8月5日
公益社団法人 関西経済連合会
社 団 法 人 関西経済同友会