新世紀の日本の安全保障を考える
~国民意識の変化を日本の今後の安全保障政策にしっかりと繋ぐ政治の強力なリーダーシップを~
2005.04.01update
- 国民の安全保障意識はここへ来て大きく変化
関西経済同友会が、安全保障問題に取り組み始めて四半世紀が過ぎた。1978年に、十数名の国を憂える関西の経済人が、「経済活動にばかり専念し、国の安全を顧みない国家が、国際社会で仲間として認められ、今までどおり豊かな生活が送れるか」という問題意識を持って、『国の安全に関する国民意識調査団』を編成し、西欧諸国を調査した当時、「国防」「国益」「主権」といった言葉はまさにタブーであった。二十数年の歳月が流れ、今日こういった言葉がマスコミに登場しない日はないが、我々は、98年の我々の提言『日本の安全保障をストレートに考える』でも、「国民の安全保障に対する意識の希薄さ」を問題意識の筆頭に挙げていたことを考えると、国民の安全保障意識はごく最近まで、日本の安全保障を考える上での根源的な問題であったように思われる。
しかし、国民の安全保障意識はここへ来て大きく変わろうとしている。北朝鮮の拉致事件では、国民の多くがテレビに釘付けになり、国民の生命、身体といった「国家主権」の根幹が北朝鮮によって侵害された事実に憤りを感じた。また、イラクへの自衛隊派遣では、自衛隊員が国の威信を賭け、出動する姿に国民は熱いエールを送った。こういった姿を見ても、いまや国民の安全保障意識は、日本の安全保障政策を考える上で大きく横たわっている問題とは言えなくなっているのではないかと感じる。 - 日本を取り巻く環境は、ますます複雑かつ深刻なものに
一方、日本を取り巻く環境は、ますます複雑かつ深刻なものになりつつある。9.11テロは、冷戦後の新たな国際安全保障上の脅威が「テロと大量破壊兵器の結合」であることを国際社会に見せ付けたが、日本周辺には、いぜん、朝鮮半島、中台関係といった冷戦時代からの「国家と国家」の対立関係が残っており、また中国の軍事的台頭といった新たな問題も顕在化しつつある。従って、日本は東アジア地域の安定に安全保障政策の軸足を置きつつも、“テロとの闘い”で国際社会としっかり連携を取り、世界の平和と安定のための貢献に積極的に踏み出していく時期に来ているように感じる。 - 今後数年間が新世紀における日本の安全保障政策を確立する絶好のチャンス
我々は、一昨年の暮れに、米国を訪問し、ホワイトハウス、国務省、国防総省などの政府要人、シンクタンク、マスコミの方々と意見交換を行った。そして行く先々で「日米関係は戦後最高にいい状況にある」というお話を聞いた。その米国は、1月20日にブッシュ政権が二期目を迎えた。
今年は、戦後60年、国連創設60周年の年であり、9月に開かれる特別首脳会合では、国連改革の議論がクライマックスを迎える。また、今年は自民党結党50周年の節目の年でもあり、11月の党大会では、 憲法改正草案が提出されることにもなっている。
こういったことを考え合わせると、これから数年間が、日本の新世紀における安全保障政策を確立する、またとないチャンスとなるのではないかと考える。 - 政治のリーダーシップが今ほど求められている時代はない
そのチャンスを生かすためにも、我々は、「国民意識の変化の兆しを日本の今後の安全保障政策にしっかりと繋ぐ政治のリーダーシップが今ほど求められている時代はない」と考えている。そういった観点から、政府が最優先で取り組むべき課題について、5点に絞って提言したい。
2005年4月
社団法人 関西経済同友会
安全保障委員会