政治の健全化に向けて
現在、わが国は人口構造の変化や地球環境問題、多極化する世界との競争激化などにより、戦後経験したことのない様々な重要課題に直面している。加えて昨年の東日本大震災発生から1年が経過したが、未だ乗り越えなくてはならない多くの課題と向き合いながら、復興への道のりを歩み出したに過ぎない状況にある。
このような厳しい経済・社会環境のもと、政治に求められているのは、強い信念に基づくリーダーシップと、現実的な視点に立った実行力により、震災からの復興を確かなものにし、経済・社会全般の改革に聖域なく取り組む姿勢に他ならない。
しかしながら現在の政治は、政党は党利党略を追い、国会審議は停滞し、国政選挙での一票の格差は違憲状態で放置されるなど、機能不全に陥っていると指摘せざるを得ない。そして重要課題の解決の糸口すら見えないまま、わが国の国際的地位の低下がますます顕著になってきている。
こうした意味で本年はわが国が長いトンネルの先に希望の光をみるのか、このまま凋落の道に甘んじ続けるのかの重要なターニングポイントを迎えている。
以上の認識を踏まえると、今の日本には党利党略による駆け引きや課題の先送りで時間を浪費する猶予は残されていない。政治は、わが国の国益を守ることが役割であり、その役割と責任を自覚しなくてはならない。国民も政治が悪い・社会が悪いといった他責の念を捨て、自律の精神を持たなくてはならない。
このような前提のもと、当委員会では、国会、政党、選挙制度、憲法改正、政治家の質などの論点について検討してきたが、いずれもが複合的に絡み合い、経済・社会諸制度の疲弊を放置してきたものであり、すぐにバラ色の日本に変わるような特効薬は無い。当委員会としては、地道に、地に足のついた実行可能な改善策を提言し続けるよりほかないと認識している。
本提言は、政治・国民の双方にとって大切なことは何かを明示し、ささやかでも政治が健全な方向へ向かうことを狙いとしている。
平成 24 年(2012 年)3月
社団法人 関西経済同友会
政治改革委員会