平成30年度予算・税制改正大綱に望む
~成長戦略の実行とともに、財政健全化に道筋をつけて将来不安の払拭を~
はじめに
日本経済は、国内総生産(GDP)が6四半期連続でプラスとなるなど、緩やかな景気回復が続いており、企業収益は過去最高水準にまで回復している。しかし、世界の政治・地政学的リスクの高まりに加え、我が国は少子高齢化や人口減少、財政悪化等の諸問題を抱える中、先行き不透明な状況が企業の設備投資や賃金の伸びを抑制し、企業の労働分配率は過去20年で最低の水準にまで低下している。
労働力人口が減少する中で潜在成長率を引き上げるためには、企業の設備投資を促すとともに、イノベーション創出による生産性向上が不可欠である。“課題先進国”である我が国がAI(人工知能)、ビッグデータ、IoT等のイノベーションを活用し、高齢化社会における新たな仕組みを世界に提示することは、国際社会における日本のリーダーシップの確立にも寄与すると考える。
また、日本にとっての喫緊の課題は財政再建である。若者や子育て世代の育成・支援を意図した政策が打ち出されてきたことは歓迎するが、優先すべきは、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化達成である。景気が回復している今こそ、税制・社会保障制度の抜本的改革を通じて財政健全化に道筋をつけ、将来不安の払拭を目指すべきである。
【提言1】イノベーション創出に重点を置いた成長戦略の実行と予算配分を
【提言2】世代間格差の是正に向けた社会保障制度改革と消費税引き上げの議論を
【提言3】法人税は設備投資やイノベーションを促進する税制措置の拡充を
おわりに
財政改革は痛みを伴うが、政府は財政再建の目的と必要性を国民に分かりやすく説明し、コミットメントを明確にするとともに、国民の間で健全な危機感を共有することが肝要である。成長戦略の着実な実行とともに、財政再建に向けた道筋を明確にすべく、健全な議論を期待する。
以上
一般社団法人関西経済同友会
経済政策委員会