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提言・アピール等

大阪府・市の芸術・文化政策に対する緊急アピール
~ 脱・80円文化政策に向けて ~

2016.08.04update

平成28年(2016年)8月
一般社団法人 関西経済同友会
芸術・文化委員会

2020年に開催されるオリンピック・パラリンピック東京大会に向けた取り組みが始まっている。

オリンピック憲章では、開催国にはスポーツと文化と教育の融合を求めており、内閣府・文化庁は、地域活性化と国際発信推進のため「Beyond2020プログラム」として全国の自治体に対して文化プログラムの推進を促している。これまでの応募・採択状況では全国の自治体の動きに比べて大阪の文化振興の取り組みは大きく遅れていると言わざるを得ない。2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会は、大阪を世界へアピールする好機である。また、2025年国際博覧会(万博)の開催地に大阪府が名乗りを上げようとしているが、国際博覧会は、人類が築き上げてきたその時代の技術・芸術の頂点を世界に向かって発信する機会でもある。

世界の都市間競争は、芸術文化と地域に固有の歴史文化を融合した創造性による創造都市戦略を競い合う局面に向かっている。しかしながら、現状の大阪府・大阪市の都市づくりの中核となるべき芸術文化振興のための予算は全国で最低のレベルにあり、クリエイターやプロデューサーが東京や他府県に流出しており人的資源が枯渇しつつある。この状況を打破するために緊急アピールとして以下の2点を求める。

  1. 大阪府・大阪市への要望~『大阪府市文化振興会議答申(案)』を踏まえて~
    1. 文化を都市政策の中核に据えた「低文化関連予算地域・都市」からの脱却・芸術・文化は都市の魅力そのものであり、その振興は、住民のこころを豊かにするとともに、新たな創造産業を生むための基盤となり、その振興は都市のインフラと並び、次世代へ引き継ぐべきレガシーを生むための投資でもある。2020年のオリンピックイヤーは大阪を世界に発信し、21世紀中盤に向かって文化創造都市として飛躍する千載一遇の好機である。大阪府・大阪市は、現在策定中の中期文化振興計画では、文化と経済を地域・都市を発展させる両輪と位置づけ、芸術・文化を都市政策の中核に据え、大阪の再生・活性化に取組むべきである。
      • 7月27日の大阪府市文化振興会議に提出された『大阪府市文化振興会議答申(案)』(第4次大阪府文化振興計画/第2次大阪市文化振興計画)では、府市ともに「めざす将来像」を「文化自由都市、大阪」と定めた上で、「(A)文化創造の基盤づくり」「(B)都市のための文化」「(C)社会のための文化」という施策の方向性を示している。この点を当委員会として高く評価している。
      • しかし、現在の予算規模のまま、これらの施策を推進し、「文化自由都市、大阪」を実現することは、極めて困難であるとの印象を拭えない。
      • 大阪府・大阪市には、「芸術・文化」を戦略分野と位置づけ、早急に芸術・文化関連予算(住民一人当たり)を少なくとも他府県並みに増額し、強い意思を持って文化創造都市への転換を急ぎ、次世代や22世紀へ向けたレガシーの創造に取組むことを求める。
      • そのためには、新たな財源の確保も必要である。優れた文化・芸術の存在は都市の魅力を創造し、人を引き付けインバウンドの拡大にも資する。宿泊税、ふるさと納税、宝くじなどの利活用については、当委員会でも調査研究を進めるが、大阪府・大阪市においても、さらなる調査研究の推進を求める。
    2. 文化プログラムへの積極的申請と「創造都市ネットワーク日本(CCNJ)」への加盟
      • 2012年のロンドン大会時に英国は全国規模での文化プログラムを実施し、開催地の首都ロンドンだけでなく、他都市・地域の活性化をはかり、英国全体のブランド価値を高め、五輪後も観光客が増加を続ける等、実績を残している。
      • 『大阪府市文化振興会議答申(案)』においては、府市ともに「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた取組み」を掲げており、この点は評価するが、スピード感を欠いている。
      • 昨年来、当会が提言している“生涯スポーツ&文化エリア=KANSAI”を目指すためにも、大阪府・大阪市は、国の平成29年度文化プログラムに対し、積極的な応募申請を行うよう、強く求める。
      • 文化庁では、文化芸術の持つ創造性を地域振興、観光・産業振興等に領域横断的に活用し、地域課題の解決に取り組む地方自治体を「文化芸術創造都市」と位置付け、一定の基準を満たした加盟都市に対して、国の事業の採択や配分等において配慮する等、支援を行っている。
      • 現在、国内74自治体が加入しており、大阪市は既に参加しているが、大阪府においても、「創造都市ネットワーク日本」に早急に加盟することを求める。
  2. 解決すべき問題
    1. 府民一人あたり80円、市民一人あたり814円~低い文化関連予算~・大阪は京都、奈良に先立つ最古の古都であり、歴史的資産や文化資源の宝庫であるにも関わらず、厳しい財政事情を反映して、大阪府・大阪市ともに文化行政の優先度は低く抑えざるを得なかった。
      • その結果、文化庁が発表した「地方における文化行政の状況について」によると、大阪府の支出する芸術文化費用(芸術文化事業費、文化施設経費、文化施設建設費の合計額=国庫補助を除く)は府民一人あたり80円(平成26年度決算ベース)となり、また、大阪市の支出する芸術文化費用(国庫補助を除く)は市民一人あたり814円(同年度)となっている。大阪府は47都道府県の中で最下位レベル、大阪市は政令指定20都市の中で下から3番目である。
    2. 文化プログラムへの対応の出遅れ
      • 早急に対応すべきは、2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会を見据えた芸術・文化の振興である。オリンピック憲章は根本原則にスポーツと文化と教育の融合を謳っており、オリンピック組織委員会は、文化プログラムを実施しなければならないと規定されている。内閣府・文化庁はオリンピック・パラリンピック東京大会が開催される2020年(平成32年)を、日本の魅力を世界に発信する好機と捉え、2020年以降を見据えて各地で文化プログラムを展開する「Beyond2020プログラム」を打ち出し、2015年度(平成27年度)から全国の自治体に対し、国の助成対象の文化プログラムの公募を開始した。
      • 地方公共団体が助成する文化事業のうち、地方の費用の二分の一を3年間に渡り国が助成するもので、平成27・28年度の採択は261件、総額52億円となっている。・国費による助成の採択事業の内訳では、大阪府内では3件、1,683万円となっており、全国シェアは、件数で1.1%、金額で0.3%であり、人口規模、経済規模に比べ極めて低い。大阪市からは申請がなされていなかった。
  3. 民間の取組みに対するサポート
    • 大阪府・大阪市内には国際レベルの芸術・文化の催しやイベントの開催に適した、魅力的で大規模な公園や広場が多数あるが、十分に活用できているとは言い難い。
    • 『大阪府市文化振興会議答申(案)<第2次大阪市文化振興計画>』の「②市内全域での文化プログラムの推進等」では、“民間が行う取組み等、市内全域での文化プログラムを推進していく”と記されている。この点を当委員会としても受け止め、官民連携を念頭に、民としての文化プログラムの振興・推進方策を検討していく。
    • その一環として、大阪城をはじめ、芸術・文化関連イベント開催に適した公園・広場の使用に関する手続きの簡素化などの規制の見直しを進め、文化プログラムを実施し易い環境づくりの推進、民間との連携・協力を求める。
    • 開催がより容易になり、コストの低下はイベントの開催頻度の向上につながり、アーティスト、国内外から観光客をさらに呼び込むことが可能になる。加えて、定期的なイベント開催は、文化・芸術をマネジメントする人材の集積を促し、大阪の芸術・文化の裾野を広げ、「文化自由都市、大阪」のブランド力、競争力を向上させるものと信じる。

以上