公的年金に関するアンケート結果について
社会保障委員会（委員長 今井宏邦・日本生命専務取締役）は、平成13年7月下旬に会員会社の社員を対象に公的年金に関するアンケートを実施、年金制度についての意識や今後の年金制度のあり方について、加入者の生の声を収集しました。
Ⅰ．アンケートの狙い
当委員会では、２年前に医療制度改革に関する緊急提言を発表、その中で、改革に伴う痛みを関係者が等しく分かち合う姿勢を持つことの必要性を強調しました。
今回のアンケートは、そのような経緯を踏まえ、今年度、年金制度改革をベースとした、今後の社会保障制度のあり方についての提言を行うに際し､改革の痛みを受ける国民の現行制度に対する意識や、今後の年金制度のあり方について生の声を収集し、それを提言につなげたいという趣旨で実施したものです。
また、実施にあたっては単なるアンケート調査にとどまらず、実施プロセスそのものが、回答者にとっても年金制度に対する意識や理解の向上につながること、そして何よりも、自分自身のライフサイクルに重ね合わせて、負担と給付の関係を「我がこと」「我が痛み」として直視してもらうことによって､年金問題に対する国民的議論が沸きあがる導火線になればという想いを込めております。
Ⅱ．調査方法について
回答者が年金制度の内容についての知識・理解が必ずしも十分でないとの想定の下に、社会保障委員会の正副委員長会社のスタッフがインタビュアーとなって､制度内容にかかわる設問については、あらかじめ用意したフリップを提示し、回答者に制度について一定の理解をして貰った上で回答して貰うという方式を採りました。
その結果、502名（男294名、女208名）の方々から率直な声が寄せられました。
性別、年代別分布 （名）
Ⅲ．アンケート結果で注目すべきこと
１．身近な制度であるにもかかわらず、制度内容が意外と知られていないこと
毎月相当の保険料を支払っているにもかかわらず、その中味について知っている人が意外と少ない。
毎月の年金保険料支払額を知っている人は１／３、自分の年金受取額については、僅か５％の人しか知らないというのが実情である。
２．しかし、制度内容を知った後では、制度に対する強い問題意識、不満感を露わにしていること
給付内容が同じで、保険料負担が2025年には約２倍になること、年金受取面で、0.6－５倍という世代間格差があることについて、「問題だ」「こんな内容になっているとは知らなかった」という人が多く、特に20－30代の男性に、現行制度に対する強い問題意識と不満感がみられた。
３．もはや現行制度の枠内での改革では対応不可能であり、抜本的改革を求める声が強いこと
少子高齢化が一層進行するなかでは、負担と給付面での世代間格差は拡大する一方であり、抜本的改革を求めざるを得ないとする意見が過半数を占めている。
４．その一方で負担構造の見直しについては、男女・年代による温度差があること
抜本的改革に際しては、高齢者に応分の負担を求めることや、基礎年金の税方式への転換といった負担構造の見直しが考えられるが、これについては､20－30代の男性で積極的に賛同する人が多いのに対し、女性、特に40－50代では、慎重な姿勢を示す人が多い。
５．年金保険料が給与天引きによって徴収されていることや事業主負担の存在が、保険料負担の痛みを和らげ、制度改革にむけてのエネルギーを減殺させてきている側面があると思われること
負担構造の見直しに対し男女・年代による温度差がある一方で、直接的な痛みのある消費税に対しては、自由記述欄に多くの人がいろいろな想いを書き綴っており、これと好対照を成している。この背景には、年金保険料が給与天引きによって徴収されていることや、事業主負担分の存在といった社会保険制度上の仕組みが加入者の保険料負担の痛みを和らげ、年金制度への問題意識や不満感のストレートな発現を抑える作用を果たしていることが窺える。そして、このことが年金改革に向けてのエネルギーを減殺させ、サイレントマジョリティを形成させてきているように思われる。
平成13年度 社会保障委員会 正副委員長およびスタッフ名簿
委 員 長 今井 宏邦 日本生命保険 専務
副委員長 松下 滋 三和総合研究所 取締役理事
江崎 勝久 江崎グリコ 社長
葉室 頼言 特定医療法人寿楽会 大野記念病院 名誉理事長
中山 登美子 白水貿易 社長
春次 賢太朗 春次メディカルグループ 理事長
上野 昌也 上野製薬 常務
片倉 冀 ニューオータニ 専務
ﾎﾃﾙﾆｭｰｵｰﾀﾆ大阪 総支配人
後藤 洋治 関西電力 副社長
佐々木廣年 環境開発研究所 会長
宇都 弘道 大阪ガス 本社支配人
赤川 正志 三井住友銀行 公共法人
営業部部長
辰村 裕司 西日本電信電話 取締役 三嶽 新太郎 住友電気工業 常務
香川 芳江 香川歯科医院 理事長
スタッフ 島田 智之 日本生命保険 企画広報部部長
前田 俊哉 日本生命保険 企画広報部課長
中山 裕之 日本生命保険 企画広報部課長補佐
江口 雅祥 三和総合研究所 研究開発第1部研究員
清水 洋司 江崎グリコ 参事
堀内 誠司 特定医療法人寿楽会 大野記念病院 課長
是枝 薩子 白水貿易 取締役総務部長
村田 賢一 春次メディカルグループ 事務局
榎原 良行 上野製薬 総務部部長
長田 正樹 上野製薬 総務課長
佐々木 成人 ニューオータニ 取締役ﾎﾃﾙﾆｭｰｵｰﾀﾆ大阪
副総支配人
奥村 誠治 関西電力 人材活性化室給与厚生
ｸﾞﾙｰﾌﾟﾏﾈｼﾞｬｰ
各務 秀夫 環境開発研究所 大阪事務所副所長
浜田 和宏 大阪ガス 秘書部経営調査室課長
伊藤 誠治 三井住友銀行 経営企画部金融調査室
室長代理
山本 博敏 西日本電信電話 人事部厚生部門長
須田 真 住友電気工業 経営開発部主席
代表幹事 三浦大輔 サントリー 経営企画部
スタッフ 大野 敬 西日本電信電話 総務部企画担当主査
事務局 萩尾 千里 関西経済同友会 常任幹事・事務局長
梅名 義昭 関西経済同友会 企画調査部部長
宮下 貴広 関西経済同友会 企画調査部
社会保障委員会