中之島4丁目を日本と世界の医療産業をリードする拠点としよう
関西経済の再生が叫ばれて久しい。その中で、医療健康産業の振興は喫緊の課題である。関西には、医療に携わる企業・団体や人材が豊富に存在し、再生医療をはじめ、種々の研究は成果をあげている。また、関西圏は、2014年に国家戦略特区に指定され、医療に関する特例が認められつつある。このように関西には、世界に冠たる医療都市になりうる素地があるが、そこではいまだ画期的な取り組みは生まれておらず、産業化をはじめ経済にも波及はしていない。経済再生の中核となるべきは、イノベーションの創出である。そのためには、従来型の研究スタイルをとる拠点ではなく、多くの人々が交流(クロスオーバー)するイノベーションハブをつくり、それを拠点に産業化をはかることが効果的と考えられる。
大阪市の一等地にある開発候補地「中之島4丁目」と「うめきた」は、今後、医療と健康をテーマに、人々がクロスオーバーし、イノベーションを創出するハブとして開発されることが期待される。
当委員会では、中之島4丁目には、再生医療など医療分野での新産業とサービスを創出するイノベーションハブをつくり、「うめきた」は、主にライフデザインイノベーションによる新産業創出と人材育成を担うべきと考える。そして「中之島4丁目」と「うめきた」が、それぞれに機能を分担し、連携することが肝要である。ことに中之島4丁目は、国家戦略特区として、特例を受け、産業振興に活用すべきである。そこで、市有地および隣接する民間土地を、3つのゾーニングで捉え、一体的・有機的に開発することが有効であると考え、以下、中之島4丁目の開発に関し、提言する。
提言1 国内外関係者が都心部でクロスオーバーする拠点をつくろう。
提言2 基礎研究の実用化、臨床、上市(産業化)まで、一連の工程をすべて
集積させ、イノベーションの創生をはかろう。
提言3 再生医療など高度・先端医療を担う医療機関および研究機関を誘致し、
国際的先端医療開発拠点としよう。
提言4 高度医療、国際医療機関、医療の産業化を担う人材を育成しよう。
提言5 3つのゾーン全体の機能連携をはかりながら、早期の開設を目指そう。
結語
医療および医療産業における関西のポテンシャルは高い。アジアをはじめ、日本の医療に対する海外のニーズも高い。関西はアジアに近く、その点で優位に立っている。大阪の都心部に医療の研究開発拠点を設けるのであれば、一定規模の臨床を確保し、各事業者が協力しながら、研究シーズを実際に臨床に応用することが産業化への必須条件である。この地域に「高度・先端医療の研究開発に関わる出先拠点」と「関連産業が参画できる場」、そして「本格的な国際医療機関」および「人材育成機関」を組み合わせることで、医療産業が進化し、世界の医療に貢献でき、関西の発展がもたらされる。
実現に向けて、調整すべき事項は多いが、本提言が早期に実現されることを望む。「100の出来ない理由を述べるより、どうすれば出来るのかを考え、行動しよう」「ひとつ1つの可能性に、果敢にチャレンジすべきである」との思いが本提言の根底をなしている。
以上
一般社団法人関西経済同友会
医療都市「関西」委員会