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提言・アピール等

アベノミクス5年間の検証と我が国の生産性向上に向けて
~付加価値の拡大・賃金上昇を伴う生産性向上~

2018.04.03update

一般社団法人関西経済同友会
経済政策委員会

 関西経済同友会 経済政策委員会(委員長=福本秀和 三菱UFJ銀行 代表取締役副頭取執行役員)は、提言「アベノミクス5年間の検証と我が国の生産性向上に向けて」をまとめました。
 アベノミクスの5年間で、企業業績は過去最高益を更新し、株価は約25年ぶりの高値を記録、労働需給は引き締まり、賃金も小幅上昇した。
 しかし、実質経済成長率は1%台にとどまり、個人消費・設備投資は力強い回復に至っていない。また、大規模な金融緩和にもかかわらず物価目標2%は未達で、財政状況の悪化にも歯止めがかかっていない。 アベノミクスの「三本の矢」のうち、大胆な金融政策と機動的な財政政策は、市場の期待を変化させて円安や株高、企業収益の改善に寄与した点で、短期的には大きな成果を挙げたが、足元では政策の持続性や将来のリスクに対する懸念が高まっている。成長戦略については、法人実効税率引き下げ、経済連携協定締結、観光立国(インバウンド)等では進捗や成果がみられる一方、労働市場改革やイノベーション促進に関する項目では目立った成果がみられない。成長戦略の方向性自体は正しいが、効果が現れるには数年単位の時間がかかるため、さらなるスピードと実行力が必要である。
 成長戦略のうち、当委員会が焦点を当てて研究した生産性向上は、少子高齢化を迎える我が国の持続的な経済成長にとって不可欠である。昨今では生産性に関する議論が盛んであるが、生産性の定義や生産性向上の目的があいまいな議論が多いように思われる。当委員会は、付加価値の拡大・賃金上昇を伴う生産性向上を目指すべきと考える。
 我が国の生産性が低い理由として、①価格引下げを重視する日本型ビジネスモデル、②GDPの7割を占めるサービス産業の生産性低迷、③イノベーションを生むのに不十分な予算・制度の問題があげられる。当委員会では、これらの課題を踏まえながら、提言を以下のとおり取りまとめた。

提言1 「生産性向上」の意味・目的の明確化 【政府・企業・個人への提言】
(1)目指すべき「生産性向上」とその目的を明確にした政策・経営戦略の議論を
   ~コスト削減ではなく、付加価値の拡大による生産性向上
(2)賃金上昇を伴う生産性向上の実現
  ~生産性向上→収益改善→賃金上昇・設備投資増加→生産性向上の好循環
提言2 ビジネスモデルの変革 【企業への提言】
(1)人口減少・AI時代を見据えたビジネスモデル変革 ~売り切りモデルからの脱却、AI・マッチング技術の活用
(2)サービス産業の生産性向上 ~IT・デジタル技術の活用、非効率な商慣行見直し・適切な価格設定
(3)国際競争力強化に向けた企業間・産官学連携
提言3 イノベーションを促す予算配分・規制制度改革 【政府への提言】
(1)科学技術予算の充実
  ①ベンチャー・成長企業育成への重点的な予算配分
(2)規制制度改革
  ①サンドボックス制度による新技術開発・実証実験の加速
  ②経済成熟化・人口減少に対応した規制・制度の見直し
 生産性向上は、政府による環境整備もさることながら、民間の取組みが重要である。企業や個人が付加価値の向上や賃金の上昇に向けて取組むとともに、生産性向上の阻害要因となっている我が国固有の商慣行やサービスのあり方について、人口減少社会を踏まえて国民レベルで議論が行われることを期待する。

以上

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