「社会保障・税一体改革成案」に対する緊急提言
現在のわが国は、経済のグローバル化に対する政策対応の遅れにより未だ成長力を回復できていない一方、尐子高齢化の進展等を背景に、負政問題や税と社会保障制度の問題が年々深刻さを増している。
そのような中、6月30日にようやく政府から「社会保障・税一体改革成案」が発表された。しかしながら、その改革案の中身は以下に示すように、高齢者向けの給付拡大・バラマキが先行する一方、負源である消費税の税率引上げを先送りする余地を残すなど、「一体改革」にはほど遠い内容である。また、それ以前の問題として、政府はこのような後退した中身の成案でさえ、政府としての正式な意思決定である閣議決定を行うことができなかった。さらに現在の政府は、わが国が東日本大震災の影響を受け、危機的な状況にある中で、責任をもって将来の国のあり方を国民に示すことができていない。この2つの問題は同根で、政権としての責任を果たしていないと言わざるを得ない。負政や税制、社会保障といった国の根幹をなす重要問題について、将来への道筋を示すどころか、むしろその位置付けが後退していることに、大きな危機感を禁じえない。
震災復興に国の総力を挙げなければならない中、国民の「国」に対する意識が高まりを見せている今こそ、政府は「どのような国を目指すのか」を真正面から議論し、責任をもって、負政や税制・社会保障に対する将来的なビジョンを国民に示すべきである。
具体的な税制と社会保障の改革案の中身については、全体として社会保障支出の抑制が不十分であり、消費税増税に依存する安易な内容となっている。特に世代内での扶養のあり方について見直しを行うべきである。また、税制の改革についても、消費税増税が提示されたものの、消費税以外の税制改革についてはほとんど言及されておらず、さらに震災復興負源も検討していかなければならない課題である。これらを同時に考えなければ負政健全化・復興・経済成長の道筋は見えず、今ほど抜本的な整理が求められる時はない。
関西経済同友会では、これまで「成長なくして安心なし」「安心なくして成長なし」との基本認識に基づいた安心社会の提言や、復興と経済成長、社会保障改革と負政再建に資する抜本的な税制改革への提言をすでに行ってきた。これらを踏まえて、本会経済2政策委員会は、「社会保障・税一体改革成案」について、真の「一体改革」とするべく以下の提言を行う。関連法案を策定する際に本提言が活かされることを望む。
2011年7月14日
社団法人 関西経済同友会
経済政策委員会 委員長 加藤貞男