課題を強みに!対馬の取り組み最前線を視察 ~企業に求められる気概とは~
環境・エネルギー委員会(委員長=高澤利康 日本政策投資銀行 常務執行役員 関西支店長)は、10月20日(水)~21日(木)に対馬・福岡視察を実施し、本会から14名が参加。日本で一番海洋プラスチックごみが漂着するといわれる対馬市で実情を視察、意見交換を行った後、海洋プラスチック研究の第一人者である九州大学 磯辺篤彦教授に日本における海洋プラスチック問題の現状と企業の役割について話を聞きました。
■対馬市における取組~最前線を担う市長・自治体関係者と意見交換~
<市長・自治体関係者コメント>
比田勝尚喜 対馬市長
対馬は南北82kmの島で、自然の恵みが対馬市民の暮らしを支えている。海ごみが漂着するのは日本の防波堤となっているためだ。産官学でグローカルに取り組む。
前田剛 しまづくり推進部政策企画課SDGs推進室副参事兼係長
漂着した海洋プラごみは、紫外線等による劣化・物理的刺激による破砕で微細化され、漂着から約半年間で再漂流する。つまり対馬で回収しなければ大量のプラスチックが日本海に流出する。スタディツアーで問題を分かち合い、企業のサーキュラーエコノミーや環境配慮型の商品購入によりお金の循環が生まれれば、深刻な過疎化・高齢化が進む対馬に若者の持続的な雇用が生まれる。海洋プラごみが多い島であることを強みに変えるべく、我々はグローバル+ローカルな課題解決に取り組む。
舎利倉政司 市民生活部次長兼環境政策課長兼クリーンセンター所長
対馬には海流と風の影響により多くのごみが漂着。発泡スチロール、漁業用ブイ、ペットボトル等、年間約20,000~30,000㎥が漂着していると推計される。ごみは回収・分別してリサイクルできるものはリサイクルし、その他のごみは埋立処分する。2003年より日韓市民ビーチクリーンアップを開始。美しい地球を次世代へ残したい。
■木坂海岸にて海岸視察・清掃体験
2日目は、対馬の中でも古い集落の一つで高齢化率83.7%の木坂地区を訪れ海岸を視察、清掃を行いました。
雨のため短時間ではあったものの、あっという間に約20袋のごみが集まりました。
■対馬市クリーンセンター中部中継所見学
対馬クリーンセンターは漂着ごみ前処理施設で、廃プラ破砕、廃プラペレット化の様子などを見学。リサイクルできず埋立処分となるごみの処理について話を聞きました。
■海洋プラスチックの現状と課題、企業に求められることとは
磯辺篤彦 教授(九州大学応用力学研究所大気海洋環境研究センター)
海洋プラごみの何が問題なのか。海岸の観光価値を損なう。海洋投棄された漁網への海洋生物の絡まり、海洋生物や海鳥による誤食も起きている。
マイクロプラスチックは、元のプラ製品が紫外線・水・温度変化・物理的刺激により5 mm以下の微細片に破砕されたものだ。日本周辺海域は、浮遊マイクロプラスチック濃度のホットスポットになっている。
日本のリサイクルはもはや限界で、今後優先されるべき対策は、プラスチックの減量(リデュース)ではないか。
ただ、プラスチックが私たちの周りや世界で衛生・福祉を向上させてきた事実を軽視するべきではない。
産業界には、「持続性のある新素材」を世界に提供することで、文明のイニシアティブを握る気概を期待する。