MICE・IRの実現~都市間競争を勝ち抜くため複合型観光施設の整備を主張~
本会では、大阪・関西へのMICE・IRの誘致は、関西のみならず、わが国全体の観光振興や経済活性化のために極めて有効な施策であるとの認識の下、2011年より調査・研究。またIRの整備は、「サービス産業の高度化」、「税負担なき公共政策」に資するものとして、IR収益による文化振興やMICE環境の強化、さらには新たな産業の創造・育成にも繋がるものとして、これまで8度にわたり提言を行ってきた。
これまでの活動・提言は、下記の通り。
【2011年度】「アジアが選ぶ関西」を考える委員会
新興国の台頭や経済連携の拡大、グローバルな都市間競争の激化など、世界的な枠組みの変化が進む中、アジアのパワーを取り込み世界に開かれた人流・物流・資流・知流の中枢となることが求められるとの認識の下、統合型リゾート部会(部会長=小椋和平 三菱商事 理事関西支社副支社長)を設置。メルボルンやシンガポールへの視察などを行い、IRのコンセプトや必要機能、立地候補などについて取りまとめ、2012年3月に提言「関西統合型リゾート『KIR』実現に向けて(Kansai Integrated Resort)~関西の認知度向上と活性化を目指し~」を発表した。
【2013年度】大阪まちづくり委員会
2011年度の提言のフォローアップ、情報収集を行うべくIR分科会(座長=松田憲二 ユアサM&B 取締役社長)を設置。特に、IR実現に向けた課題として、ギャンブル依存症対策について調査・研究を行った。
【2014年度】MICE・IR推進委員会
MICE・IRの整備は、東京以外の成長エンジンの強化として、地域活性化促進のみならず、わが国の持続可能な成長実現の観点から重要な事業であるとの認識の下、MICE・IR推進委員会(委員長=福島伸一 新関西国際空港 取締役会長)を設置。平成25年(2013年)末に上程されたIR推進法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)や国の動向把握、またMICEを取り巻く環境や可能性について理解を深めるとともに、マカオ、シンガポール視察も実施した。
その後、2015年1月に、水都・大阪のイメージを取り入れ「浪速八百八橋」をモチーフとしたイメージパースを描いた提言「『大阪・関西らしい世界初のスマートIRシティ』の実現に向けて―コンセプトの提言―」を2015年1月に発表。「MICE」、「エンターテイメント」、「ウェルネス」の3つのテーマから構成される3世代が楽しめる施設や交通アクセス強化の必要性、カジノ収益を文化性の高い施設運営などに還元するシステム(PPPプラットフォーム)などについても盛り込んだ。また提言「『大阪・関西らしいスマートIRシティ』で採用すべきギャンブル依存症対策」も同時発表した。
さらに翌2月には、IR議員連盟(国際観光産業振興議員連盟)会長の細田博之衆議院議員、同 幹事長の岩屋毅衆議院議員らを訪問し、提言を説明するとともに、IR推進法成立に向けて意見交換を行った。4月にはラスベガスへの視察団も派遣した。
【2015年度】関西MICE・IR推進委員会
2014年の提言を深堀すべく下記、4つの分科会を設置した。(委員長=福島伸一 新関西国際空港 取締役会長)
「ビジネスモデル検討分科会」(座長=勝見博光 グローバルミックス 代表取締役)-外資と日本企業がWin-Winの関係を築けるビジネスモデルや夢洲の基盤整備の在り方などについて検討。
「PPPプラットフォーム検討分科会」(座長= 丸尾真哉 Jプロデュース 取締役社長)-カジノ収益をつかって、どのように地域との共生を図るべきかについて検討。
「MICE振興分科会」(座長=吉野国夫 ダン計画研究所 代表取締役)-夢洲・ベイエリア地区に必要なMICEの具体的機能や規模、MICE誘致に必要な誘致体制について検討。
「ウェルネスリゾート研究分科会」(座長=井垣貴子 健康都市デザイン研究所 取締役社長)-多様な健康・医療産業を包含した世界初の「ウェルネスリゾート」を実現するために必要な機能などについて検討
分科会活動の他に、2016年3月には、「大阪・関西らしいIRの経済効果の試算について」を発表。大阪・関西IRは年7,600億円の経済効果と9万8千人の雇用創出が見込めるものとした。そして経済効果については、IR議員連盟や内閣府などへの説明も行った。
【2016年度】関西MICE・IR推進委員会
2015年度の分科会活動の各研究課題について調査・研究を継続した(委員長=大阪国際会議場 取締役社長)。そして、2016年11月に提言「事業者募集要項に盛り込むべき事項」(4分科会提言)を発表。「大阪府・大阪市に直ちに取り組んで頂きたい課題」として、ベイエリア全体ならびに夢洲のグランドデザインの早急な明確化などを求めた。また、「事業者募集要項に盛り込んでいただきたい事項」として、国際水準のMICEの整備や、夢洲街づくりのコンセプトに「ウェルネス」を位置づけること、カジノ収益の還元先や配分を決める「地域共生委員会」の新設などを提言した。なお、提言「日本で採用すべきギャンブル依存症対策」も同時に発表。各排除プログラムの実施やカジノへの入場料の徴収、IR事業者による依存症対策の実施などを提言した。
このほか、提言発表と前後して、IR議員連盟、自民・公明各党や大阪府・大阪市への説明も行った。また8月には、二階俊博 自由民主党幹事長を訪問し、IR推進法案の28年度臨時国会での成立などを要望した。
その後、12月15日に、IR推進法が衆議院本会議で可決・成立。1年以内に提出されることが政府に義務付けられるIR実施法案の成立にむけて、今後も活動を行うこととなった。
【2017年度】万博&MICE・IR推進委員会
IR推進法の成立後、政府はIR推進本部(特定複合観光施設区域整備推進本部)を設置、さらに4月以降は政府・有識者からなるIR推進会議(特定複合観光施設区域整備推進会議)において、IRに関する制度設計やIR実施法案についての検討がなされることとなった。そこで、IR推進本部ならびにIR推進会議に対する要望として、2017年6月、緊急要望「真に地域経済の振興に寄与するIR実現に向けて~ IR実施法案策定に求める4項目 ~」を発表。立地自治体の自主財源の充実確保のため、国と地方の税収比1:1を目指したカジノ税税収の配分の実現や、カジノ入場料の徴収と依存症対策の財源として立地自治体への配分を行うことなどを求めた。なお、7月31日には、IR推進会議が「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ(案)~『観光先進国』の実現に向けて~」が取りまとめ、その後、全国9ブロックでそれぞれ公聴会を実施。そこで、当会からも意見表明を行い、同じく夢洲での開催が目指されている大阪万博開催前の2024年までのIR開業などを強く求めた。
一方、大阪府・大阪市では、4月にIR推進局を設立。それに先立ち、3月以降、IR推進会議が開催され、大阪府市、有識者、経済界によって「大阪IR構想」の検討が行われていることを受け、2017年8月に提言「Well-Being新産業創造と世界最高水準の『日本型IR』に向けた夢洲まちづくりへの提言」を発表。夢洲においてウェルビーイングに関する新産業創造がなされること、そのためにも新産業に関する実証フィールドが展開出来るような基盤整備がなされることを、大阪府・大阪市に提言した。
当委員会では、今後も、IR実施法案の早期成立に向けて関係各所への働きかけをおこなうとともに、「大阪・関西らしいMICE・IR」の実現にむけて、大阪府・大阪市が策定する事業者募集要項に盛り込むべき事項などについての調査・研究を継続して行う方針である。