私達の取り組み
「新たなエコロジーを創造するアートの力」講演会を開催
2024年9月2日
大阪・関西の文化力向上

「新たなエコロジーを創造するアートの力」講演会を開催

文化・芸術の力委員会(委員長=久保行央 トヨタモビリティ新大阪 代表取締役)では、2018年~2021年「なにわの企業が集めた絵画の物語」展(全3回)の成果を未来に継承すべく、9月2日、金沢21世紀美術館 館長/東京藝術大学名誉教授/国際文化会館 アート・デザイン分野アドバイザーで、今秋開催の「森の芸術祭 晴れの国・岡山」アートディレクターでもある長谷川 祐子氏を講師に迎え、講演会を開催。世界におけるアート、キュレーションの取り組み最前線、ビジネスパーソンにおくる「知と感性を揺さぶる力」についてお話を伺いました。


金沢21世紀美術館館長/東京藝術大学名誉教授 長谷川 祐子氏

「新たなエコロジーを創造するアートの力」

2024年の現在、なぜ芸術が重要なのか?

美術館には、記憶の保管庫と実験室の役割がある。「人新世」と呼ばれる今、人間中心主義、過剰開発、資本主義が引きおこした多くの問題、格差社会、分断が起きている。情報の共有度が増したにも関わらず、なぜ断絶が増大しているのか?言語を超えた「共感」が大切だ。芸術は、世界を探求する過程を通してオルタナティブな考えやものの見方を提示し、感性や他者への理解力や想像力を養う。不確実性の高い現在、AIのシンギュラリティが迫る中、人間として残された重要な領域である想像力、直観、独自の発想、予測し難い近未来に対して、試行錯誤しながら一歩踏み出し、身体と新しいエコロジー(周りを取り巻く状況)をつなぐのが芸術だ。

金沢21世紀美術館では、「市民を強くする」ことを考えた。工芸が盛んな土地柄で、新しいテクノロジーをアートと絡めて見せる。金沢市内の小学4年生を招待する作品鑑賞プログラム「ミュージアム・クルーズ」も継続的に実施している。大切なのは自分がメディアになることだ。誰と来たのか、いつ来たのかによって体験は違う。一緒に共有する事により、価値が高まる。
今秋開催の国際芸術祭「森の芸術祭 晴れの国・岡山」では、森がもたらす恵みを芸術の力で活性化することを目的とし、「本当に必要な資本とは何か?」を問いかける。文化施設、生活インフラ、自然環境を共通の資本と考え、アーティストのみならず、専門家も交え、地域の人々の協力を得ながら「新しい資本」を作ることを目指す。 

サスティナブルな未来のために、これからの美術館・アートが果たす役割は、「未来支度」の場、多様な表現が出会う場、新たなエコロジー創造の場、様々な共同の可能性の場である。アートは解決を与えないが問いを与える。科学は文明を作り、芸術は文化をつくる。これらが一緒になり、サステナビリティにつながる。