
「新しい時代を切り拓く文化・芸術の力」講演会を開催
文化・芸術の力委員会(委員長=久保行央 トヨタモビリティ新大阪 代表取締役)では、2月20日、京都市立芸術大学 学長・画家 赤松 玉女氏を講師に迎え、講演会を開催。「新しい時代を切り拓く文化・芸術の力」をテーマにお話を伺いました。
■京都市立芸術大学 学長・画家 赤松 玉女(あかまつ たまめ)氏
「あったらいいな」と「アリエナイ」
ビジネスは「あったらいいな」という価値観で商品を作るが、アートは「アリエナイ」と感じるものを作品として生み出すと言われている。アートは即効性や実用性ではなく、未来に価値が判断されることが多い。歴史的に、多くのアーティストは同時代には理解されず、作品が不快感を与えたり問題視されることもある。アートの本質は、驚きや面白さを提供し、当たり前を疑わせることで「社会はこれでいいのか」と問いかける点にある。
大学がアートを育てる
本学は、芸術の教育研究を「創造活動」として推進し、地域と連携しながら国際的な芸術文化の交流拠点となるべく活動。1880年、京都の伝統工芸・美術を守るために京都府画学校として創設され、9回の移転を経て現在に至る。
今、「人と違うことを考える」教育が減っているのではないか。STEM教育は収束思考に陥りがちだが、それにArts(芸術など)を加えると、拡散思考が加わり創造的な発想が生まれる。絵を描くには、観察力・客観視・持久力・柔軟な思考力が必要。デッサンは、うまい絵を描く修練ではなく、多視点で客観的に捉える力を養う。批判的評価を受けても諦めず続ける粘り強さと、自分でダメだと思ったら意地にならず発想を転換することも大切だ。
アートがまちを育てる
2023年、京都駅東部エリアに移転した新キャンパスのコンセプトは「TERRACE(テラス)」。内と外をつなぐ柔軟な空間を示し、寛容(TOLERANCE)、連携(RING)、対案(ALTERNATIVE)などの価値を体現する。駅近で、国内外からの視察も増加。学生たちは地域を取材しワークショップや展覧会、演奏会などで、共創活動を展開している。アートは次なる歴史を作る行為だ。作品を創ることで人や地域がつながっていく。古い作品を美術館で鑑賞するのも大事だが、今、変化の時代を生きるアーティストの創造活動をみることも大切な社会の一面である。