大阪市は交通局の完全民営化を 19 年度当初より実施せよ
~ 大阪市政改革には抜本的な改革手法を。改革リーディング・シティへ ~
現在の大阪市の発展の基礎を築いたとして今日まで語り継がれる第7代大阪市長關一は、将来の市街化を考えて、大正14年に西成郡(現在の西成区・東淀川区・西淀川区)と東成郡(同東成区、住吉区)を合併、当時東京市をしのぐ人口、工業生産額を誇る日本一の都市が誕生した。彼はその市域拡張記念式典において、『面積、人口の大なるは誇るべきではなく、近代都市としての施設を整備することこそが重要である』と述べ、御堂筋および御堂筋線の建設、煤塵防止条例の制定、大阪商科大学の設立等、幾多の業績を残した。ここに、その後の『大大阪』発展のフレームが形作られたのである。
今、その大阪市が、財政破綻のふちであえいでいる。その原因は、バブル期のハコモノ投資の失敗、職員の過剰・厚遇等が指摘されているが、企業を含めた市民の市政への関心の低さも原因の一つではないかと思われる。社団法人関西経済同友会は、早くから本問題の重要性に気づき、市政関係者に対して提言等を行い、市政改革の取り組みを支援してきた。平成17年6月、本格的に検討するべく「都市経営改革委員会」を新設し、折りしも作成に着手された市政改革マニフェストに代表幹事と共に「緊急提言」を行い、マニフェストに基づいて作成された行財政改革計画(案)に対してもパブリックコメントを出すなど、その内容の検討に努めてきた。
とりわけ、高速鉄道事業および自動車運送事業を運営する大阪市交通局は、職員数7,895人と大阪市職員の17%を占め、累積損失約1,617億1千万円、一般会計等からの繰入額年約110億円と市政改革上からもその改善は最重要課題の一つである。しかしながら、最近になってもカラ残業が発覚するなど、職員の意識改革を含めた改革への取り組みは、同じ公営企業である上水道事業との比較においても、遅々として進んでいないのが現状である。
都市経営改革委員会では、大阪市問題の縮図として「大阪市交通局」の両事業に焦点をあて、検討を進めてきた。平成17年12月15日、市政改革本部は市政改革マニフェストにおいて市営バス・地下鉄事業の公設民営化の方針を明らかにしたが、これを受けて本委員会は、平成18年2月15日に「民営化については完全民営化を原則とし、再度複数の手法を比較検討し、19年度当初より実施することを求める。併せて、バス事業については赤字路線の廃止・再編等を18年度中に実施し、地下鉄新規路線の建設の是非は新民営会社において検討させよ。」との意見表明を、大阪市に対して行った。
今回、本委員会の平成17年度における活動の総まとめとして、大阪市政改革を掛け声だけに終わらせず、実りあるものにするために、大阪市交通局の各事業の平成19年度当初よりの「完全民営化」を大阪市に提言するものである。
平成 18 年 5 月
社団法人関西経済同友会
都市経営改革委員会