2011 年度税制改正大綱の閣議決定について
本日、来年度税制改正大綱が閣議決定された。かねてより、成長戦略の要のひとつとして議論されてきた一般企業の法人課税実効税率の引き下げが、5%とはいえ漸く実現に向け動き出したことは歓迎したい。ただし、わが国企業の競争力を確保するとともに、対内直接投資の促進を図り、日本経済の活力向上につなげるためには、少なくとも国際水準までの引き下げが不可欠であり、今回の引き下げはその第一歩に過ぎないことを忘れてはならない。
この他、中小企業の法人税率の一段の引き下げと雇用促進税制の創設が打ち出されている。これらの中小企業・雇用対策に加え、株価対策として証券優遇税制の2年延長も決まり、わが国経済が足元で調整局面にある中、これらの措置がトータルで今後景気下支えにつながるものと期待される。
政府・与党内での調整で紆余曲折を経たものの、曲りなりにもまとめられた来年度税制改正大綱であるが、実現に向けては、ねじれ国会の中で税制改正関連法案を成立させるという一段の厳しいハードルを乗り越える必要がある。与野党ともに、国民不在でいつまでも政争に明け暮れることなく、国益という観点に立ち返り、真摯な国会論戦を行って頂きたい。わが国の置かれている厳しい経済・財政状況に鑑みれば、政策の停滞は許されないことを肝に銘じるべきである。
今回の税制改正において、法人税などの減税措置見合いの財源確保のため、取りあえず富裕層への増税策などで対応しているが、付け焼刃的な感は否めず、税制の目指すべき方向性が必ずしもはっきりしない。
また、消費税引き上げに関する議論も先送りされているが、国民が安心して暮らせる社会の実現のためにも、社会保障制度の再構築と併せて、消費税を含めた税制の抜本改革について、超党派で早急に取り組んで頂きたい。
以上
社団法人 関西経済同友会
代表幹事 山中 諄