英国による特別講演会・意見交換会を開催 ~気候変動対策の取り組みと低炭素移行に関するビジネスチャンスについて~
本会 環境・エネルギー委員会(委員長=清水博 日本政策投資銀行 常務執行役員 関西支店長)では、12月3日、COP26議長国で「気候変動対策なくして経済成長はならず」というビジョンを持つ英国の企業団体・都市から5名をスピーカーに迎え、特別講演会・意見交換会をオンラインにて実施。
当日は約80名が参加し、英国における「グリーン産業革命」を推し進めるための新政策「10-Point Plan」、COP26に向けた議論や英国・欧州の最新動向をふまえ、気候変動対策と脱炭素社会に向けたビジネスチャンスについて、コロナ禍からのよりよい復興(Build Back Better)とクリーンでレジリエントな未来に向けた視座とともに、活発な議論が行われました。
(左上から時計回り) セーラ・ウテン氏、ケン・オフラハティ氏、ジェームス・ディグル氏、タニア・クマール氏、清水委員長、アレックス・ミンシュル氏
オープニング
英国総領事 セーラ・ウテン氏
気候変動に対するアクションは、産業界にとってチャレンジであると同時にチャンスだ。企業のリーダーシップと変化への対応力は、ビジネスと人類の両方の存続に必要不可欠である。英国は世界に先駆けて様々な政策を打ち出し、気候変動対策をリードしてきた。ジョンソン首相は11月、グリーン産業革命に向けたThe ten point planを発表。これにより、何千人ものグリーンな雇用を創出、2050年までのネット・ゼロの達成に向け行動が加速される。キーワードは「共通」と「協力」。継続的な関係構築と知見やアイデアの共有に繋がることを期待する。
気候変動対策をめぐる英国の政策/COP26のご紹介
COP26アジア大洋州特使 ケン・オフラハティ氏
英国では首相が対策の政治的重要性を示し、気候変動対策とCOP26への準備はトッププライオリティだ。COP26は気候変動の転換点になるべきで、コロナ禍からよりグリーン、公正・包摂的でレジリエントな回復が必要だ。
COP26議長国として、①適用とレジリエンス ②エネルギーのトランジション ③ファイナンス ④自然 ⑤交通運輸 の国際的なキャンペーンがある。今、各国は大規模な経済刺激策を打ち出しており、この機会に再エネに投資しなければ一世一代のチャンスを失うことになる。
ASEANも急速に取組みを進めている。グローバル企業も取組みを進めており、特にヨーロッパは顕著だ。
政府・企業の気候変動対策 ~英国企業の事例~
英国産業連盟(CBI) インフラストラクチャー・エネルギー部主任政策アドバイザー タニア・クマール氏
CBIは、パンデミックに対応するためにグリーンな回復が必要であるとして、低炭素テクノロジーやインフラへの投資、失業率の改善、雇用におけるメリットを政府に主張している。産業界の投資を使ってよりクリーンでレジリエントな未来に向かう。パンデミックについては企業だけでなくコミュニティへの影響も見ている。パンデミックの危機対応は、気候変動にも応用できる。サイエンスが重要。データを見なければならない。輸送での大きな変化は、ガソリン車の段階的な禁止だ。昨年までは2040年までの廃止とされていたが、さらに加速することになった。移行の間のハイブリッド技術は重要である。
英国産業連盟(CBI) エネルギー・気候変動部主任 ジェームス・ディグル氏
ビジネスの野心的な取組みを進めるため、排出削減に取り組むツールを作成している。企業は強力な排出削減のコミットメントが必要だ。興味深いのは、気候変動に関する顧客の影響である。顧客のニーズに応じて取組みの度合いが増し、従業員の維持、新規従業員の獲得、キャリア選択にも影響を及ぼす。投資家からの期待もある。
英国での最大の課題の一つは住居と公共の建物の脱炭素化である。新たな取組みとして、クリーン・ホームの取組みが家主に資金提供するかたちで進められている。
'One City Plan’の取組みと都市のエネルギーマネジメント、企業参加に関するベストプラクティス
ブリストル市議会企業担当者 アレックス・ミンシュル氏
ブリストルは、英国西海岸の都市でロンドンに近く、人口50万人。気候変動非常事態宣言は2018年で、英国自治体では初だった。先日、気候変動戦略のビジョンを出した。雇用創出、投資、健康増進などあらゆる環境を改善する。テクノロジーの話だけではなくこころの問題でもある。公共投資を触媒として民間部門と協力し大きな飛躍をとげるべくCity Leapエネルギー・パートナーシップをつくった。今後10年間で少なくとも10億ポンド投資できればと思う。企業と協力し我々の都市に必要な規模の投資をしていきたい。
■環境・エネルギー委員会 英国講演会・意見交換会 開催概要
日時:2020年12月3日(木)<日本時間>16時~ 18時(<英国時間>7時~ 9時)
開催形式:Zoomによるオンライン開催
【次 第】
1.開 会
2.挨 拶 清水 博 環境・エネルギー委員会 委員長
3.ご講演
オープニング:駐日英国総領事 セーラ・ウテン氏
「気候変動対策をめぐる英国の政策/COP26のご紹介」
COP26アジア大洋州特使 ケン・オフラハティ氏
「政府・企業の気候変動対策 ~英国企業の事例~」
英国産業連盟(CBI)
エネルギー・気候変動部主任 ジェームス・ディグル氏
インフラストラクチャ―・エネルギー部主任政策アドバイザー タニア・クマール氏
「'One City Plan*’の取組みと都市のエネルギーマネジメント、企業参加に関するベストプラクティス」
ブリストル市議会企業担当 アレックス・ミンシュル氏
*One City Plan:ブリストル市環境サステナビリティ委員会が主導する、2030年までにカーボンニュートラル並びに気候変動に対する強靭化を図る計画(2020年12月現在)。
4.質疑応答・意見交換
5.閉 会