シンポジウム「大阪中之島美術館×関西経済同友会=?!~子どもの鑑賞教室を入口に~」を開催
文化・芸術の力委員会(委員長=浮舟邦彦 滋慶学園 理事長)では、1月25日にシンポジウム「大阪中之島美術館×関西経済同友会=?!~子どもの鑑賞教室を入口に~」を開催。美術館と経済人・経済界との関わり、大阪中之島美術館への期待をテーマに、活発な意見交換が行われました。
パネリストからのコメント
■大阪中之島美術館へのエールと経済界としての関わり
文化・芸術の力委員会 委員長代行 坂上和典氏(ボンドコンサルティング 代表取締役)
芸術文化と産業は車の両輪だ。当会では2018年度から開催してきた社会実験「コーポレート・アート・コレクション『なにわの企業が集めた絵画の物語』展」(第1回・第2回・第3回)の成果をもとに、提言「アートを活かした人材育成と都市価値向上へ。~大阪・関西の未来を文化の力でつくる~」を発表。美術館におけるアートを活かしたアクティブ・ラーニング、市民が美術館の担い手として能動的に参加できる機会の提供、夜間開館やイベント開催など開かれた美術館の実現を求めてきた。
芸術文化支援は社会的な使命として賛成する。多角的・立体的な方法で美術館のポテンシャルが引き出される。たとえば企業タイアップの夜間開館はどうか。経済界も含め、みんなが美術館をどう応援していくかが重要だ。
■大阪中之島美術館の挑戦と「ナッカ」プログラム
大阪中之島美術館 館長 菅谷富夫氏
大阪中之島美術館では、2022年2月の開館以来、まずは美術館としてやるべきことをやってきた。今、子ども向けプログラムとして「ナッカ・スクール・プログラム」(学校単位の見学受入れ・15分/30分のレクチャー)、「ナッカキッズ」として対話型鑑賞をはじめとするさまざまなラーニングプログラムを行っている。
美術館も世界で起こっていることと無縁ではない。例えばモディリアーニ展では、ロシア・ウクライナの戦争でヨーロッパからの作品が来ないかもしれないという状況になった。飛行機の便の確保、保険会社との折衝など様々な課題があった。
夜間開館はメリット、デメリット、経営的な現実がある。ご提案頂いたような支援により夜間開館が定着し仕事帰りの美術鑑賞が当たり前になれば、それが一般の認識を変えていくことになる。
■体験教育の可能性、活きた大阪の街をアートに
学校法人帝塚山学院 理事長 野村正朗氏
本学院は創立の理念「意志の力、情の力、知の力、躯幹の力」の下、体験を重視した教育を行っている。大人は効率を考えるがゴールへの道すじは一つではない。一人ひとりの個性を大切にする学校づくりができればと思っている。経営では直観力が重要。本物をみたときの感性が直観力につながる。
大阪の街では看板や自由なネオンサインを見に若い人が世界からも来ている。これをアートと見なし、活きた街をアートにできれば面白い。
■アートで世界を俯瞰する
森美術館 館長 片岡真実氏
(撮影:伊藤彰紀)
森美術館は「文化都心」をコンセプトにつくられた街、六本木ヒルズにある。展示替え以外は休館日なく10時~22時開館。都市の暮らしの一部となっている。
今日の世界は、政治、経済、社会、文化、気候変動について異なる価値観や歴史観が複雑に絡み合っている。現代アートは世界を映し出す縮図で、多様な価値観やアイデンティティに敬意を払うダイバーシティの考え方がますます重要になっている。
現代アートは従来の学校の一科目ではない。あらゆる科目に通じる複合的なものだ。現在、開館20周年記念展として50組超のアーティストによる「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」を企画している。こうした展覧会を通じて美術の考え方を解放し、世界をいかに学んでいくかを伝えたい。アーティストの作品を解読する知的な作業により世界への俯瞰的な視点が養われる。美術館が持続可能なビジネスモデルをいかにつくるかも大きな課題だ。
文化・芸術の力委員会 シンポジウム
「大阪中之島美術館×関西経済同友会=?!~子どもの鑑賞教室を入口に~」 開催概要
【日 時】2023年1月25日(水) 15時~17時
【次 第】
1.開 会
2.主催者挨拶 浮舟 邦彦 文化・芸術の力委員会 委員長
3.問題提起 坂上 和典 文化・芸術の力委員会 委員長代行
4.シンポジウム
パネリスト 菅谷 富夫 大阪中之島美術館 館長
片岡 真実 森美術館 館長
野村 正朗 学校法人帝塚山学院 理事長
坂上 和典 関西経済同友会 文化・芸術の力委員会 委員長代行
ボンドコンサルティング 代表取締役
5.閉 会