国民の参加と自立を促す「21世紀型安心社会」を目指して
~皆で「支える」「働く」「学び・育てる」「繋がる」安心づくり~
わが国は、今、人口の減尐・高齢化と経済・社会のグローバル化という大きな環境の変化に直面している。そして、今後も、他国に類を見ない高齢化率の上昇やアジアを始めとする新興国の台頭による経済的地位の低下が続くと予想されている。このようななか、「成長ばかりに目を奪われるべきでない」という議論も聞かれるが、国民経済の発展や国家財政の再建、尐子化の克服などを通じた持続的な成長を実現せずして、国民が安心を得ることなどできない(=成長なくして安心なし)。
生産年齢人口の減尐が続くなかで、持続的な成長を実現するためには、国民一人ひとりが自らの能力を高め、思う存分発揮することが欠かせない。それにも拘らず、実感を伴わない景気回復とそれに続く世界的な景気後退の下で、年金や雇用、育児、介護、社会的孤立などに関する不安が高まり、消費の抑制や晩婚化・非婚化など、リスク回避的な行動を選好する傾向が強まっている。その結果、内需の低迷や尐子化に歯止めが掛からず、ジャパン・シンドロームとも呼ばれる閉塞状態に陥っている。更に、東日本大震災でこれまで当たり前と思われていた安全への信頼も大きく揺らいでいる。国民生活における不安を克服しなければ、わが国の成長は覚束ない(=安全・安心なくして成長なし)。
内閣府の世論調査に拠れば、日常生活に不安や悩みを感じている割合が7割に上る半面、現在の生活に対する満足度は6割を超える1。わが国には、不安はあるが今の生活には満足、という「ぬるま湯」に浸かっている余裕はない。安心の基盤たる安全の確保を急ぐとともに、現状に甘んじない「覚悟」と国民の挑戦を後押しする「能動的な安心」がこれまでにも増して必要とされている。
そこで、当委員会では、持続的な成長を支える国民生活における安心に焦点を当て、国民の参加と自立を促す「21世紀型安心社会」の構築に向けて、国や地方自治体、企業、個人が果たすべき役割について提言する。
2011年5月
社団法人 関西経済同友会
安心できる社会を考える委員会