提言・アピール等

21世紀の日本の農政を考える
~大消費地アジアを睨んだわが国農業の強化策~

2012.04.27update

平成24年(2012年)4月
一般社団法人 関西経済同友会

アジアと食料・農業を考える委員会

-日本の農業の現状-
農業は、地域の基盤であり、国の根幹にかかわる産業である。しかしながら、わが国においては、農業の将来像やその実現に向けての具体的な道筋が未だ明確に示されておらず、衰退の一途を辿っている。農業従事者の高齢化は年々進行し、儲からない農業では若い新規参入者を呼び込むこともできず、後継者問題は深刻さを増している。また、耕作放棄地の増加は、食料安全保障の観点のみならず、国土保全の観点からも問題である。

-東日本大震災が日本の農業に与えた影響-
このように疲弊し続ける国内農業は、さらに大きな打撃を被った。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、広範囲にわたって農地や農作物へ甚大な被害がもたらされるとともに、風評被害によってわが国の農作物・食品の「安全・安心」のブランドイメージが脅かされる事態となった。被災地やその付近を原産地とする野菜や穀物等は、日本の消費者からさえも敬遠され、諸外国によって輸入停止措置や輸入規制が実施されたため、盛り上がりつつあった海外市場への輸出の機運もそがれることとなった。

-グローバル化が加速する自由貿易の潮流-
世界に目を転じれば、リーマン・ショック以降、世界経済は大問題を抱えており、選挙を戦う各国のリーダーはこの難局を乗り込えるために、成長著しいアジアを中心とした新興国との経済連携強化を模索している。APECや東アジア・サミットにおける環太平洋経済連携協定(TPP)を中心とした新たな自由貿易体制をめぐる米中の議論は、アジア市場争奪戦の様相を呈しており、日本も無関係ではいられないことは明白である。日本のTPP交渉参加への意思表明が呼び水となり、カナダ、メキシコが追随したことで、これまで積極的でなかったEU、中国、韓国も、一転して日本との経済連携に前向きな姿勢を見せており、各国の政治的・経済的な思惑が一体となって、世界的な枠組みが刻々と変化している。

-当委員会の基本認識-
今後、わが国農業の持続的な発展のためには、TPP等の高いレベルの経済連携の推進によって、アジア・世界の成長を取り込みつつ、国内外の市場において競争力のある強い産業としての農業を創出していかねばならない。国内農業の競争力強化と、経済連携の促進は二律背反するものではなく、同時並行して加速することで、より大きな成果が期待できる。毎日のようにTPPのニュースがメディアを通じて発信されているが、誤った情報や、闇雲に国民の不安を煽るような偏った情報も見受けられる。政府もメディアも正しい知識のもと、国民の正しい理解を醸成すべきである。今こそ、風評被害を乗り越える競争力のある強い農業への転換に向け、オールジャパンで取り組まなければならない。

-視察の結果を踏まえた具体的な提言-
当委員会は、農業関係者や有識者との意見交換を行い、日本の農業の現場のみならず中国および韓国の農業の現場を視察した。今後の日本がとるべき施策につき、こうした視察での聞き取り調査を踏まえ、可能な限り具体的な提案を行うものとする。

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