子どもの未来は日本の未来
~自己肯定感を高め、貧困の連鎖を断ち切る~
関西経済同友会子どもの未来委員会(委員長=宮川正 大阪ガス 代表取締役副社長執行役員・帯野久美子 インターアクト・ジャパン代表取締役)は、提言「子どもの未来は日本の未来~自己肯定感を高め、貧困の連鎖を断ち切る~」を取り纏めました。
1.問題意識
子どもは日本の未来を創る大切な宝である。子どもが健やかに育つための環境を整備することは、少子高齢化が進む日本の経済社会の活性化を図る上でも重要である。
日本では、「相対的貧困」の子どもが7人に1人いると言われている。相対的貧困は周囲からは見えにくいが、実際には、経済的な理由で友達皆ができることができなかったり、親に心配をかけまいと我慢したりしている子どもたちがいる。そのような状況の常態化は子どもたちの自己肯定感の喪失や諦めにつながり、進学や就職の選択肢など、子どもの未来に影響を及ぼしかねない。また、貧困は世代を超えて格差を固定化させうる(「貧困の連鎖」)という点で深刻だ。
本委員会は、未来社会を創る人材となる子どもたちが、自己肯定感を持ち、夢を語ることができるような成育環境をつくるため、「貧困問題」の解消に向けた提言を行う。
2.提言
行政への施策提言
【1】養育費確保のための法律と運用規則を早期制定すべき
・ 養育費の不払いがあった場合、裁判所が口座情報等を照会・提供し、差し押さえができるよう、民事執行法を早期に改正するとともに、利用者に配慮した運用規則を検討すべき。【国】
・日本司法支援センター(法テラス)や養育費相談支援センターの機能を強化し、海外と同様に、養育費の取り立ての代行や裁判を支援すべき。【国】
【2】就学前教育と高等教育を受けるための経済的支援を確実に実施すべき
・子どもが自己肯定感を持って成長し、 社会人として経済的にも自立できるよう就学前教育の充実に対して、最優先で予算を配分すべき。【国】
・低所得世帯に向けて、学用品等を現物支給すべき。【地方自治体】
・小学生が放課後を過ごす居場所としての学童保育(放課後児童クラブ)の利用料負担を軽減すべき。受け皿の拡充と質の向上を図るべき。【地方自治体】
・大学等については、 一律の無償化ではなく、志と能力があっても経済的な困難に直面している入学希望者を対象とした給付型奨学金制度の大幅な拡充により教育機会を担保していくべき。【国】
【3】スクールソーシャルワーカーの専門性向上・処遇改善すべき
・ 大学等でスクールソーシャルワーカー養成のための講座や実習等のさらなる充実を図るなど、業務の重要性、求められる専門性に対応した人材育成・研修の仕組みを整備すべき。【国、地方自治体】
・ 正規雇用を原則とし、その専門性と業務内容に見合う処遇改善を行うべき。【地方自治体】
社会への呼びかけ ~子どもの貧困問題の認識・取組みを広めよう~
【4】テクノロジーも活用した課題解決のエコシステム構築しよう
・ 貧困問題の認識をもっと高めよう。個人・企業それぞれが無理のない範囲でできることから始めることで「自分ごと」として一歩踏み出し、子どもを受け止める居場所・止まり木を地域に増やそう
・ 最先端テクノロジーも活用し、活動団体を応援したい個人・企業と、支援を求める活動団体をつなぎ社会課題を解決する持続可能なエコシステムを整備しよう
・ 2025年万博において、社会課題の解決に向けた国際連携「子どもの未来ウィーク」設定を実現しよう
以上
一般社団法人関西経済同友会
子どもの未来委員会