平成29年度 事業計画
未来社会の仕組み創りと成長を担保する提言と活動を行う
一般社団法人 関西経済同友会
Ⅰ.活動方針
英国のEU離脱や「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ氏の米国大統領就任など、欧米先進諸国では「反移民・自国第一主義」や「反グローバリズム」の潮流が起こっており、これが「世界の分裂・分断」を生みつつある。今後、グローバル化の歪みという負の側面の修正がどの程度行われるのか、また世界を主導できる国が不在となり、いわゆる「Gゼロ時代」に向かうのか、現状においては定かではない。
世界各国で「格差」の拡大と「貧困」の連鎖が、「人々の分裂・分断」を招いている。日本では、「失われた10年」以後、国富の分配構造の変化などにより所得格差が拡大、一部の富裕層に富が集中する一方、いわゆる「相対的貧困」率は16%とOECD加盟国35か国中7番目に高い水準に達し、「貧困の連鎖」問題も顕在化してきている。
日本は、国内外で起きているこうした現実にしっかりと目を向け、その問題の要因の分析を進め、改善策・対処策を探っていかねばならない。また、急速に進行する「少子高齢化」対策も含め、様々な社会問題や課題に対応し、世界の模範(先導者)たる国家構築を目指すべきである。そして、「明るい未来」が期待できる社会へと仕組みを変革していかねばならない。
人工知能(AI)、ビッグデータ、IoT、ロボティクスなどの最先端技術が産業や社会を大きく変える予感がある。日本は、革新的技術を生み出し、それを活用することで世界市場における企業の競争優位を高め、新しい産業や新たな雇用を創出していかねばならない。そして、これらのイノベーションにより、企業は生産性の向上を、個人は生活の質を高める社会の実現を目指さなければならない。
大阪・関西地区においては、WMG、うめきたⅡ期みどり、MICE・IRなど、当会が過去に蒔いた幾つもの種が、弛まぬ活動の成果として、蕾となり、まもなく開花しようとしている。こうしたプロジェクトの実現のための活動を継続するとともに、今後のさらなる飛躍に向けた新たな種を蒔いていかねばならない。
このような課題認識のもと、全国各地の経済同友会、とりわけ西日本地区の経済同友会との連携強化を図り、さらなる活動の充実を図っていく。
また、行政や他経済団体と協力し、「万博誘致」や大阪・関西地区で計画されているインフラ案件の整備など、大阪・関西のみならず、日本にとっても重要なプロジェクトの実現に力を尽くす。
さらに、当会の魅力の一段の向上に努め、会員間の活発な議論と交流を進めるとともに、目指すべき社会と具体的な案件の実現に向け、同友会らしい積極的な提言と活動を行っていく。
Ⅱ.重点課題
1.未来に希望の持てる健全な国・社会の実現を目指す
○国際社会の「先導的」役割を担う提言を行う。
「自国第一主義」や「反グローバリズム」が欧米諸国で台頭しつつある。トランプ米国大統領の誕生は歴史的必然なのか。われわれは、自由と民主主義の普遍的価値を守れるのか。混迷の時代における諸問題や課題を研究、その解決の道を探る。
○10年先(2020年代)を睨んだ社会・産業・企業のあり方を探る。
人工知能(AI)、ビッグデータ、IoTなどの先端的技術の統合的活用が社会や産業構造を大きく変えつつある。将来起りうる革命的な社会構造の変革を見据え、国の政策や新たな産業、ビジネスモデルのあり方を検討する。
○社会に対する企業の「責任」と「貢献」を考える。
財政再建、社会保障、格差、貧困、働き方改革、教育など、日本が抱える様々な問題に向き合い、企業として果たすべき責任と社会に対する貢献の道を考える。
2.大阪・関西の更なる活性化、独自性を発揮する
○「大阪・関西」の再興を図る。
人工知能(AI)・ロボティクスといった先端的技術やデザイン思考を活用する新たな取り組みなどを通してイノベーションを起こし、大阪・関西の製造業・サービス業が世界市場において、その存在感を高める道を考える。
○「観光先進地域 大阪・関西」を目指す。
大阪・関西の魅力を再発見し、新しい文化の創造を図り、2020年の来阪外国人旅行者数1,300万人の達成に向け、独自の取組みを研究する。またMICE・IRと万博の誘致実現に向け、関係省庁や他の経済団体などと連携していく。
○道州制を含む今日の地方分権のあり方を検証する。
三大都市圏、地方圏の抱える課題を整理し、二重行政の解消や税財源の適正配分などこれまでの議論を踏まえ、地方分権のあり方や道州制につき検証を進める。
3.同友会の未来を創る
○同友会のさらなる価値創造を図る。
「時代を一歩先取りし、自由に大胆に発言、行動する」という同友会の設立理念に立ち返り、今日的問題や課題に真摯に向き合い、その解決・改善策を提案する。誰もが発信できるICT時代における同友会としての発信方法と適切な行動について再考する。
○同友会活動の活性化、活動基盤を強化する。
同友会の魅力を高め、会員満足度の向上を目指す。活動結果の客観的な評価手法を検討し、その評価結果などをベースに同友会活動の改善に繋げる。
Ⅲ.具体的な活動計画
上記の活動方針、重点課題を踏まえ、以下のとおり、平成29年度の委員会を設けて、積極的な活動を行う。
<同友会全体としての活動や課題に取り組む組織>
1)総合政策審議会
同友会としての対外発信力を向上し、提言の実現のため、政治家や行政関係者などとの交流を進める。
2)調査企画部会
代表幹事の諮問を受け、適宜、諸課題に対する検討を行う。
3)経済同友会連携会議
西日本をはじめとした全国の各同友会との活発な交流を図り、連携を深め、提言力を高める。(案件により常任幹事も参加)
4)会員満足度向上委員会
会員満足度の向上、活動基盤の強化、会務運営につき検討、改善策を実行する。
<主に特定事業の支援・実行に取り組む委員会>
5)海外交流委員会(2年委員会・継続)
今期25周年を迎える「ボストン・シンポジウム」と2018年の「関西・ハーバードフォーラム」を企画・立案し、開催する。ハーバード大学との良好な関係の維持に努めると共に、米国における新たな交流先も検討する。
6)メンタリング委員会(新規)
関西経済をリードする当会の企業経営者と、「若手の会」のメンバーとの交流や大阪イノベーションハブ(OIH)でのベンチャー起業家とのメンタープログラムを通じて、関西の若手経営者の自律的成長を促しエコシステムの構築に寄与する。
7)大阪「食文化」プロデュース委員会
来阪者を「おもてなし」の心で迎える大阪らしい食文化に関する調査・研究を行い、その魅力の継承と普及に繋がる情報発信の方法などについて模索する。また、大阪の食文化を愉しむ体験を通じて会員間の親睦を図る。
8)関西広域インフラ委員会(改組)
関西地区における広域インフラ事業(リニア中央新幹線延伸事業・北陸新幹線延伸事業・関西高速道路ネットワークのミッシングリンク解消~大阪湾岸道路西伸部及び淀川左岸線延伸部)やうめきたⅡ期工事における「質の高いみどり」を中心としたまちづくり構想、中之島再生医療センター誘致などの実現に向けた取組みを行う。また、四国新幹線構想などの動向につき理解を深める。
9)関西2019・20・21委員会
スポーツツーリズムを含め、スポーツを通じた関西の観光振興に努めるとともに、健康産業や観光産業などを含むスポーツ関連の産業振興について研究する。また、2019年~2021年のゴールデン・スポーツイヤーズに向けた気運醸成のための取組みを実施する。
10)芸術・文化委員会
大阪・関西の新しい芸術・文化について調査・研究を行う。来阪外国人が着目する大阪・関西の魅力に我々も改めて目を向け、自らの魅力を再発掘するとともに、芸術・文化への関心を地域として高める。加えて、文化プログラムとして、企業所有の美術品をお借りした美術展の開催を検討する。
11)お水汲み祭り支援委員会
「堂島薬師堂節分お水汲み祭り」の支援を通じた水都大阪の魅力向上に取り組む。
12)サイバー適塾支援委員会
サイバー適塾の会員増強やカリキュラムの充実などを支援する。
<国・自治体や企業への提言を主目的とする委員会>
13)政治・社会問題委員会(2年委員会・新規)
欧米先進諸国で起こっている「自国第一主義」や「反グローバリズム」の潮流を冷静に分析し、「現代における資本主義が抱える問題」を研究し、日本社会のあるべき姿を探る。
14)安全保障委員会(2年委員会・継続)
戦争の「抑止力」という視点のみならず、積極的な平和貢献と国益に繋げるための日本の外交課題について調査・研究する。海外視察も検討する。
15)デジタル革命委員会(新規)
①先端技術探求分科会
人工知能(AI)・ビッグデータ・IoT及びロボティクスといったデジタル革命が進行している。日本が、この革命におけるトップランナーになるための国家政策と企業戦略を具体的に調査・研究する。
②アジアのデジタル革命分科会
変化の著しいアジアにおける最新動向を調査・研究し、我々が進むべき道について検討する。
16)経済政策委員会
アベノミクス(三本の矢、新・三本の矢)を検証するとともに、世代間格差の是正を目的とした年金改革のあるべき制度改革について更なる調査・研究を行う。
17)次世代志向の政策を考える委員会(2年委員会・継続)
高齢者から若者まで一人ひとりの意識を如何にして次世代志向に変えていくか、来るべき未来に向けて国民の意識や行動が変わることを目指し、そのための仕組み・制度について調査・研究を行う。
18)子どもの貧困委員会(2年委員会・新規)
6人に1人と言われる「子どもの貧困」問題を放置することは、労働力の質の低下を招き、長期的には企業経営に悪影響を与えることになる。こうした問題に目を背けることなく、特に大阪市における現状を調査・研究した上で、企業が取りうる具体的な対策について検討する。
19)地方分権改革委員会(2年委員会・新規)
当会では、これまでも地方分権のあり方や道州制について検証・提言を行ってきたが、関西広域連合の実績を踏まえた上で従来の議論を改めて整理し、憲法改正も含めた今日的な地方分権改革を検討する。
20)中堅企業委員会(2年委員会・継続)
「匠の技」と「おもてなし」を両輪として柔軟性と機動性を発揮することが中堅企業には必要との考えを更に深化させ、人工知能(AI)・ビッグデータ・IoTの活用などの新しいビジネス(顧客価値創造)の潮流にどのように対応するかを調査・研究し報告書を作成する。
21)企業経営委員会
少子高齢化により働き手の不足が現実化しており、企業経営においても、労働環境の柔軟性や生産性の向上に向けた取り組みが不可欠になっている。こうした課題を解決するための組織のあり方や人事政策について調査・研究し、これからの「働き方」の課題と改善点の研究を行う。
22)関西版ベンチャーエコシステム委員会
イノベーションの創出や成長の加速化に繋がるデザイン思考の活用方法や、起業を促進するための人材育成を含めた環境整備の研究を行う。また、スタートアップを支援するための企業などのネットワーク作りや、ベンチャー企業の海外展開のための国際的なネットワーク作りなどの支援方法などについても検討する。
23)万博&MICE・IR推進委員会
夢洲における「万博誘致」、MICE・IRの実現に資する活動を行う。また、夢洲におけるウェルネスを含めた「まちづくり」を調査・研究する。
<会員相互の交流、自己啓発を主目的とする委員会>
24)会員懇談会
時宜を得た講師の招聘による啓発活動を推進するとともに、会員相互の交流を促進する。
25)若手の会
メンバーの自主運営による若手会員(50歳未満)の交流促進、自己研鑽を行う。併せて、同友会会員をメンターとする交流なども実施する。
26)時事問題研究会
時事問題(企業倫理など)をテーマとした有識者による講演会に加え、現場への視察や意見交換などを通じ、自己研鑽に資する活動を行う。
27)経営塾
変革・成長を続ける企業の経営者による講演会を実施する。
以上
平成 29年4月1日