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提言・アピール等

東日本大震災からの復興に向けた第2次提言
~復興計画の早期策定と復興財源のあり方~

2011.06.16update

2011年6月16日
公益社団法人 関西経済連合会
社団法人 関西経済同友会

関西経済界では、東日本大震災からの復興について、日本全体で復興を支えるという考え方のもと、一日も早い復旧・復興と日本経済の回復に向けた第1次提言を4月26日に公表・建議するとともに、東北経済界等と連携し、様々な支援活動に取り組んでいるところである。

先般、震災復旧のための第1次補正予算が成立したところであるが、被災者への生活支援、瓦礫処理、雇用対策、早期の事業再開支援、原発事故や風評被害への対応など、緊急に取り組むべき課題は山積しており、第2次補正予算の早期編成をはじめ追加的な財政支出を逐次実行していかなければならない。さらに、まちづくり、産業振興などの本格復興に向けた中長期的な取り組みの具体化も推進していく必要があり、政府の強力なバックアップのもと、地元において復興計画策定が早期に行われ、被災者の復興への希望と意欲を支えていく必要がある。

当面の緊急対応、中長期的な復興への取り組みを着実に実行していく上で、財源の確保は避けて通れない課題である。政府の「東日本大震災復興構想会議」においても復興財源のあり方について議論が行われ、方向性が示されようとしているところである。そこで、今後の復興財源確保の具体化に向けて、以下の通り提言する。

  1. 復興財源確保にあたっての基本的考え方
    1. 復興計画の早期策定
      今般の大震災の被害の大きさから、本格復興にあたっては、阪神・淡路大震災当時を大きく越える規模の財政支出が必要になると予想されるが、復興財源の確保が先決ではなく、将来を見据えた創造的復興(新たな付加価値の創出)に繋がるような復興計画が早期に策定され、財源確保の目的や使途が具体化されなければならない。政府は復興方針や各種支援策をスピード感を持って打ち出すとともに、地元自治体による復興計画の策定を強力にバックアップすべきである。
    2. 中長期的な財政健全化方針との両立
      震災復興の財源は相応な規模を確保する必要があるが、わが国の危機的な財政状況からは単純に国債の増発に頼ることは慎むべきある。国債の増発を行うにしても、国民的理解のもとその償還財源を担保し、中長期的な財政健全化方針との両立を図る必要がある。
  2. 復興財源確保のための方策
    1. 歳出全体の見直しの徹底
      復興財源の確保にあたっては、子ども手当の見直しなど、政府はまずマニフェスト施策を含めた歳出全体の思い切った見直しを行い、財源の捻出に最大限取り組むべきである。
    2. 民間の技術・ノウハウ・資金の活用
      復興事業の実施にあたっては、民間の技術・ノウハウを最大限に活用するとともに、政府・自治体の財政支出を抑制するためにも、幅広く民間資金を活用することが必要である。そのためには、将来的に一定のキャッシュフローが見込まれるものの、民間だけではリスクを負担しきれないような復興事業について、民間の技術・ノウハウや資金を呼び込むための工夫が必要となる。このため、例えば、政府出資による「震災復興基金」(仮称)を創設し、政府保証や利子所得課税優遇措置を付した「復興基金債」(仮称)の発行により、内外の機関投資家をはじめとする民間資金を呼び込むことを検討すべきである。同基金の活用により、農業・漁業の大規模化による競争力強化、改正PFI法のコンセッション方式によるインフラ整備・運営などを推進していくべきである。
  3. 「復興債」の発行と「復興税」の導入
    歳出削減の努力を行ってもなお公的支出が必要な復興財源については、他の国債とは別枠の使途を明確にした「復興債」(仮称)の発行により賄い、あわせてその将来の償還財源確保のために、国民に広く薄く負担を求める「復興税」(仮称)を償還期限までの時限措置として一体的に導入することが適当である。その際、国民の理解とマーケットの信認を得るために、震災復興に関する歳出と歳入については別勘定として財政規律の確保を明確にすべきである。「復興税」の導入時期については、震災の影響を受けた経済情勢の回復・好転の状況を見極めて判断する必要がある。「復興税」については、国民全体で広く負担を分かち合うということ、また経済への影響を最小限にすることに鑑みると、社会保障財源と明確に分離した上で、消費税率を一定期間上乗せすることが最も適当である。ただし、被災者への配慮から、被災地の一定所得以下の納税者には消費税の還付などの措置を講じることを検討する必要がある。

以上